イタリアワインを楽しむ

第233回 イタリア研究会 1999-12-14

イタリアワインを楽しむ

報告者:前サントリーミラノ事務所長、現同社ワイン事業課長 林 茂


報告者:第233回イタリア研究会(1999年12月14日 六本木・国際文化会館)

林 茂 前サントリーミラノ事務所長、現同社ワイン事業課長  

「イタリアワインを楽しむ」



司会 それではイタリア研究会を始めたいと思います。今日の講師は、サントリーワインのワイン事業課長であります林茂さん。ですが、というか、ミラノに駐在した方は懐かしい方と思いますが、サントリーのミラノ店の支配人,駐在員事務所長などをされまして、駐在をされた方は全員お世話になっている、そのような方で、イタリアがかなり長く、それより、イタリアで初めて日本人としてソムリエの資格を取られたということで、非常に貴重な方でいらっしゃいます。と言いますのは、日本にこのワインが合うだろうかという最初の段階をやっている方でして、でき上がったワインを持ってきて、これはうまいと言う、ほめたたえるソムリエとは全然質が違う方でして、実際に何を輸入したらどうやって日本人の口に合って売れて行くのかということを、常々考えながら仕事をされてきたということです。

 今ワイン事業課長ですが、当然のことながら、フランスワインとか、出張で世界各国を飛び回っていらっしゃいまして、経歴はもう林さんにお任せしますが、『イタリアワインをたのしむ本』(講談社)、『最新基本イタリアワイン』『基本イタリア料理』(TBSブリタニカ)などの著書があります。これ以外に三田出版からも1冊出されています。


林 ただいまご紹介頂きました林でございます。こういう会に出るのは初めてですので、高橋さんからメールはたくさんいただいていたのですが、返事もせずに今日に至ってしまいますが、一応皆さんいろいろな方がいらっしゃると思うのですが、よくわかってらっしゃる方もいらっしゃるし、本当にイタリアが好きで、でもワインは初めてですみたいな人もいると思います。できるだけわかりやすくやりたいと思います。一応1時間ちょっとお話させて頂いて、それからワインが3種類あります。白ワインが1種類と赤ワインが2種類です。最初にアルコールが入ってしまいますと、皆さんいい調子になってしまいますから、一応話がある程度めどがつくまではお話にさせて頂きたいと思います。

簡単に紹介して頂いたのですが、実は私、82年から86年まで4年半ミラノに行きまして、レストランサントリーという和食の店なのですが、その店で支配人をしておりました。その後86年に帰って参りまして、実は私どもの会社の食品、イタリアの食品を始めるということで、食品の輸入の仕事を4年間、90年までやらして頂きました。後90年には事務所をわけるということで、また90年赴任しまして、99年の4月まで、丸9年間ミラノにおりました。ですから変な話、ミラノに13年半ということで、普通でしたら第2の故郷とでも言うのでしょうけども、実は私中学の時に越境入学していまして、自分の家に13年しか住んでおりませんで、ミラノの方が自分の住んでいたところより長くなってしまったという感じで、非常に懐かしく思っております。たまたまワイン事業部というところに帰ってきましてワインの仕事をしておりまと司会の高橋さんもそういうふうにご紹介を頂いたのですが、実は私は食品をやりたくて、食品を一生懸命やっていたのですが、どういうわけかワインということになってしまいまして、ワインをやっているのですが、将来的にはもっと食品も勉強したいなというふうに思っています。それからたまたまですが、今の仕事の中でイタリア以外のワインもやっているのですが、イタリアワインが今ちょうど多いものですから、99年は合計で8回、先々週帰ってきたのですが、8回行ったり来たりしまして、まだイタリアから抜けられないでおります。

それでは本題のワインの方に入りますけれども、皆さんの手元に全部で7つの図、あるいは表がございます。これは後で参考にさせて頂きますので、ご覧になりながらお聞き下さい。


今日のお話は、まずイタリアワインの近年の変化、特に日本市場に置ける変化、それからイタリアワイン、一般的に言われるイタリアワインの特徴であるとか、その分類法、それからイタリアの北から南までいろいろなワインがございますね。それと主な知っておいたら良いだろうなと思われるようなイタリアのワイン、というふうな感じで進めまして、その後今度品種から見たらどんなワインがあるのだろうというふうなことを、これを、最近ちょっとセパージュとフランス語で言いますけども、ブドウの品種も結構うるさく言われますので、それも少し見てみます。最後に試飲のワイン、その前に南イタリア、最近少し注目されています南イタリアのワインがありますので、そんなものにも触れまして、最後はワインというふうに考えております。

ご存知の通り、イタリアのワインというのは、近年やはり日本にもかなり入ってきております。過去10年で10倍だとか、20年で30倍だとか、こういった数字が言われます。かなりの量が急激に入ってきています。これはイタリアワインだけではなくて、日本のワインの市場が大きくなっているわけですが、ちなみに去年の数字で言わせて頂きますと、市場全体が約3700万ケースということですので、そのうち海外から輸入されるワインは約6割です。59%ですね。これでだいたい2000万ケースくらいです。そのうちイタリアのワインというのはだいたい19%、2割くらいですね。370万ケース。ですからフランスワインが今43%ございますので、ちょうどフランスワインが半分ちょっと、イタリアワインがその半分ということで、以前は、10年位前ですと、イタリアワインというとずっと下の方にしか出てこなかったのですが、今では2番手です。むしろ諸外国、ドイツ、アメリカという国になりますと、もうフランスと1、2番を争っています。実際にイタリアのワインの生産量も過去の10年を平均しても600万キロリットル。これは結構多い数字ですので、80億本になりますかね、それくらいのワインを作っております。そのワインも輸出しているわけですが、輸出もフランスより多くて、世界一。生産量も世界一。消費も世界一。消費量もフランスと並んでほぼ60リットルですね。一人当たり60リットル。日本がやっと、すごいブームと言って3リットルですから、いかに差があるかわかりますけれども、それくらいの数を作り、売っているわけですね。


 それではなぜこんなにたくさん作って、たくさん売っているワインが、日本であまり知られなかったのだろうかというのは、我々サントリーのようなある程度大きい会社の責任も十分あると思います。これは私の責任ではないのですが、会社の責任でもあるかなというふうに思っています。というのはやはり最初に何があったのかというふうな話になりますと、やはりワイン=高級なもの、フランスのシャトーものから始まるそういった有名なワイン、ということから始まっていますので、どうしてもワイン=フランスだったのですね。皆さんここにいらっしゃる方はイタリア大好きな方ばかりですから、当然そういうお話をすると、そうだそうだと言って頂けると思うのですね。まさにその通りで、料理もそうなのですね。やはり、よく考えてみて頂いたら、80年代、そのもっと前と言いますと、イタリアの料理ですらそんなに今ほどではなかったと思うのですね。

 それがハイファッション、イタリアのファッションが入ってきて、その後いわゆるイタリアの高級なワインのブームもありました。当然レストランも流行ってきましたね。イタリアレストランがいっぱいできました。実は90年の湾岸戦争と言いますか、それが勃発してから、非常に市場が不況に入っていくわけですね。この状態がずっと長く続くわけですが、その時点で非常に市場の価格と言いますか、高いものにあまりいかないと、むしろ安くて、あるいはコストパフォーマンスが高いもの、非常に品質対効果の高いものということで、こういうものが売れるようになった。これはファッションの業界の方もいらっしゃると思うのでよくおわかりかと思います。素材を見るようになる。ブランドだけではない。その中でもイタリアの素材、あるいはイタリアのこういった衣料品はどんどんどんどん伸びてきたわけですね。同じようにワインにもそういった傾向が現れています。しかしただ昔、イタリアで飲んだおいしいワインが、日本に帰ってくると全然おいしくないと、こういった時代と同じかと言うと、そうではないですね。

 この10年、15年位の間に、イタリアにおいても、実は農業、特にワイン作りにおいては、非常に技術革新が進みまして、後に南イタリアの話もさせて頂きますが、技術革新が進んで、新しい技術、あるいはそういった基本的なことができるようになって、長持ちするワイン、ですから、海外へ輸出しても十分持つワイン、こういうワインを作ることができるようになったわけですね。ですから大量に日本に輸出、あるいは輸入されているワイン、これも今までであれば1年あるいは18カ月位で酸化して色が変わってしまったものが、だんだん長く持って大丈夫ということになってきたわけです。

 もともとはイタリアのワイン作りというのは農業だったのです。 実際に地図を見て頂くとわかりますが、イタリアには非常にワインの生産の地域が多いです。これは他のヨーロッパの国と大きな違いです。フランスでもスペインでも、あるいはドイツでも、だいたい5つか6つの地域でほとんど語られてしまうのですが、イタリアの場合は、ほぼ全土でワインを作っています。20州のうちブドウのできない州はないわけです。北はよく言いますが南アルプスのチロルから、南はアフリカに近いパンテッレリアの島まで、あらゆるところでブドウを作る。こういうことがワイン作りになってきているわけです。それだけではないですね。顕著な特徴があるわけです。なぜかと言いますと、日本と同じように島国であって、海があって山があってそれから湖があり川がある。丘があり、と言うことで、いろいろな地層があり、いろいろな気候が存在する。北から南まで1800キロメートルということで、その自然の差というのは、非常に大きい。皆さんご存知の通り、100人イタリア人がいれば100のアイデアがあるというくらい、イタリア人は勝手ですよね。よく言えば個性的な利己主義ですが、非常にバラエティがあるわけです。悪く言えば非常に勝手なわけです。法律も最低限のことを決めていますから、後は自分の勝手なのですね。ですからいろいろなワインを作ることができるわけです。そういう意味で種類が非常に多い。裏を返すと、非常にわかりにくい。これがイタリアワインがなかなか海外で認められない、あるいはよくわからないと言われた理由だと思います。品種も多ければ、地域も多い。呼び名も決まっていない。ブドウの品種で呼ばれたり、昔のストーリーで呼ばれたり。よくありますね。ラクリマ・クリスティだとか、エスト・エスト・エストだとか、中にはブッタフオコだとか、サングエ・ディ・ジューダだとか、いろいろな名前がついています。これを意味をひもとくと、なかなかおもしろいです。そういった歴史もなかなかおもしろいのですが、わかりにくいことには変わりありません。一度この前の本(『基本イタリアワイン』)の時に、これは3年前に出した本ですが、この本の時にどうやってまとめたらいいのかと、イタリア人自身でもなかなかまとめられないのに、どうやってまとめようかなというふうに思って、非常に苦労した思い出があります。

イタリアワインの変化から特徴のところを今やっているわけですが、もう一つこれから言えるだろうなと思うのは、やはり昨今のこの赤ワインブームですね。日本人のこの極端と言うのは、もう赤ワインが良い、と言うと8割くらいは赤になってしまうのですね。実際に売れた時期はそのくらいあったと思うのですね。今はだいたい赤が55%くらいになりましたかね。非常に振れ幅が大きいということで、昨年、今年というのはワインの輸入業者というのは非常に苦労していると思います。我々もその中の一人です。その健康ブームというのはどこから来るかと言いますと、やはり今の世の中の流れの中で、ある程度のものは全部みんな持っている。非常に安定化した時代ですから、不況であっても安定化しているわけですね。そうなると健康であるとか、ナチュラルであるとか、こういういわゆる言葉がキーワードになりますね。ですから健康であってナチュラルであると。こういうものがどんどん出てきます。ワインもオーガニックワインと言われるものがどんどん出てくると思います。それから赤ワインが良いということで、やはり赤ワインということで、サントリーも赤玉ポートワインというのをやっているのですが、古くからある日本的ワインまでいっぱい売れてしまって、いいのかなというくらいたくさん売れたりして、変なこともあるのですが、サントリーというのはもともと赤玉ポートワインで生まれた会社なのですよ。それを作っていっぱいお金ができたので、先代が何とかそれを通してウイスキーと。最初ウイスキーを作っても売れなかったわけです。そういう時代も、その赤玉で儲かったお金で何とかやっていけたわけですね。社名を変える時に、赤玉というのは太陽ですから、英語で言うとサンですね。サントリーの創始者の名前、名字が鳥井ですから、サントリーという名前をつけたわけです。ですから鳥井さんと言うからサントリーというのではなくて、そういってもいいのですが、実際はそういうアイデアがあったのです。すみません、余談で。


今度は健康の方なのですが、よくポリフェノールが非常に身体にいいと言いますよね。これは一つの色素、赤いワインの特に色素として皮に付いていると言われるのですが、これは水溶性、いわゆる水に溶けると言われています。もちろんあれはワインの中の87%近くは水です、後はアルコールと他の成分ですね。それを考えますと、水に溶けるというのは非常にいいわけです。ところがもう一つこれに代わるものに、ほぼ同じ成分でリコピンというのがあります。これは勉強されている、あるいは先生がいらっしゃったら私よりよくご存知かもしれませんが、トマトの赤い色素の中にあるリコピンです。同じように抗酸化作用があるということで、今非常に言われていますガン化しない、あるいは非常にコレステロールを作らないとかですね、血液を浄化する、こういった作用が実際に認められてきています。ですから、こういう健康に良いと言うのは、やはりどうも食品とワインと合わせてくるともっといいのではないかなという気がしています。

 そういう意味で、実は私がイタリアのチレントというところで訪問した、チレントと言うのはナポリの南、サレルノの南側の国際的ないわゆる保護地区に指定されたところです。非常にきれいな海岸線があるところですが、そこにアメリカ人の学者のアンセル・キースという人が住んでいまして、この人は夏だけ来るのですが、それでも6カ月くらい住んでいます。私がお会いした時はもう、昨年お会いした時すでに93才でしたので、非常に高齢の方なのですが、この方が実は30年も前に「地中海式ダイエット」という言葉を作った人なのですね。どうやってやったかと言いますと、あのチレントの25のファミリーと、それから世界で一番心臓疾患の率の高いと言われているフィンランド、カレーリア、たしかカレーリアという地方だったと思います。そこの家族、25のファミリーを対象に、まったく反対にやらせたのです。ですからフィンランドの方にはイタリア式のオリーブオイルがほとんどで、それにオリーブの実であるとか、野菜であるとか、そういったものを食べてもらう。イタリアの方のファミリーには、フィンランドの人達が食べているバターとチーズ、こういうのを食べてもらうということで、4か月間やった後の結果が、実際にコレステロール値を見ますと、イタリア人の方は22%増えている。フィンランド人は15%減ったという結果が出まして、それがテレビで報道されて、いろいろな情報になったわけですが、そういうことからもわかりますように、やはりオリーブオイル、もちろんいいんですよ。野菜もいい、魚も少し食べていい、お肉も少しは必要です。でもそこにもワインもかなりあります。これは細かいデータはありませんが、アブルッツォ地方もやはり非常に長生きすると言われているのですね。それは赤ワインを多用した、あるいはたくさん飲むということと、その地方の料理があると。やはり南イタリアの料理というふうに言われております。


少しワインと関係ない話が長くなっておりますが、イタリアの先程ワインがどれだけ多いかということをお話しましたが、先程600万キロリットルと言いましたが、実際にワインを作る、もちろん農家は100万軒近くあるわけですから、農家はすごくある。そのうちでブドウを作るというのがだいたい4万軒と言われております。ちなみにボトリングする業者、ボトルに入れて売ると、一つの業者がだいたい5~6枚のラベル、種類のワインを作りますと、だいたい20万くらいになりますか。かけるとね。そうすると20万枚位のラベルがあって、20万種類のワインが毎年出ているわけですね。それが年代ごとにずっとあるわけですから、ものすごい種類のワインが市場に出ているわけです。我々がそれをどうやって全部覚えられるかと、とても無理です。ですから、フランスのワインのソムリエさんは何年の何と言い当てると言いますけど、我々イタリアはどうだと聞かれたら、私はすぐに不可能だと答えます。最近は非常に技術的にもいろいろな技術がどんどんどんどん横に流れるのが早くなりましたし、新しい機械もどんどん入るようになりましたから、もう今ではほとんどわからないです。いろいろな品種も、カベルネ・ソーヴィニオンだとかカベルネ・フラン、あるいはシャルドネ、ピノ・ノアール(ピノ・ネロ)と、こういった昔イタリアには少なかった品種がどんどん入ってきていますので、そういったものを使うこと、あるいは樽を多用することで、非常にワインがわからなくなってきています。ですから樽を使えばいいかということではないと思うのですが、そういう新しいワインがいっぱいできた、ということが更にわかりにくいイタリアワインをわかりにくくさせているということが言えると思います。後で表で見ますけれど、実際に今アメリカではスーパータスカニーとかスーパー・ヴィーノ・ダ・ターヴォラと言われているテーブルワインの少しハイクラスのものですね。この中に今いわゆるソライアだとかティニャネッロとか入っているわけですね。そういうワインはやはりカテゴリーから少し下がったところにあるものですから、そういうふうに言われるわけですが、実際は日本のお酒で越の寒梅が2級で売られたと一緒で、やはりそういうワインというのは、本当に作る人がお金をかけて作って良いものができた。そうかと思うとイタリア人の中には、俺はこの樽を使ったんだ、と言って、これだけ労力をかけたから、これくらいのお金はするんだと言って、値段を高くしている人がいるのですが、そうではないのではないかなと。値段は消費者が決めるのではないかなと思うのですけど。そうと思われるようなワインがいっぱい出ています。ですからこれもよくわからないです。普通ですと、値段の高いワインがいいワインだと思うのですが、必ずしもそうではないということですね。


それでは表の方を見て下さい。1のところにピラミッドを作っておりますが、実際にイタリアで、こういうふうにしたいと。実際によく見ますと、こういうふうなピラミッドになっていないのですが、DOCG、DOCを合わせますとだいたい2割くらいですね、全体の。それから、その間に来るV.d.T.I.G.T.、テーブルワインの上級クラスつまりI.G.T.ですね。これについてはだいたい全体の28%位。この上の部分だけでだいたい半分くらいですね。あと残りがその下のクラスになるテーブルワイン。確かにDOCG、DOCワインというのは規定があります。DOCGというのは、いわゆるここにも書いてあるとおり、保証付、ガランティータですから、保証付ですよね。簡単にどこがDOCと違うかといいますと、実際に作った業者が、そのワインを一応見てもらう。監査官がそれを見て、味見をして、その樽を見る。樽が何リットル入っています。それを0・75で割って何本作れると。その枚数しかDOCGの証紙をくれません。あれは税金がかかるのですが、それを貼るわけです。ですから、一応それ以上作れないことになってますけど、DOCの場合は、いっぱいたくさん作っていますので、組合などの証紙が多少足りなくても、全然問題がないということになるのですが。DOCGとDOCの違いは、大まかに言うとそのくらいのところです。DOCGは今20個あります。DOCの方は286と書いてありますが、去年の時点で289です。今年もどんどん増えていますが、今の時点で言うと、もしかしたらまた1個増えているかもしれませんので、年度で区切って言うようにします。

私が考えたワインのこういった分類というのは、どうもいわゆる規定で分類するのと、本当に我々が知っておかなければいけないものと違うのではないかなと思うのです。ですから、イタリア語、皆さんやっておられる方いらっしゃって、皆さんすごくできる方もいらっしゃると思うのですが、自分が覚え始めた時のことを思い出して頂きたいと思うのですが、やはりイタリア語は動詞がいっぱい変わるじゃないですか、不規則に。しかも人称を言わないでぱっといきなり動詞から出てきたりしますね。スペイン語もそうかもしれませんが。そうなると、誰が誰に言っているかというのは、その変化しかわからない。そういうことなので、一定の数の動詞を完璧に暗記しなければいけないということですね、変化をね。ワインも同じではないかなと。こんな300も400もあって、しかもその中にタイプの違いがいっぱいありますので、それをやると1000とか2000とかなってしまうのですね。それを全部覚えられるかというと、とても覚えられませんから、20位は何とか、普通ちょっと顔を見て、スタイルを見たら誰々さんと思い出すかもしれないなと言うふうに、それくらいのワインを覚えたらいいのではないかなということで、この新しい本には、一応21のワインということで、表にして作ってあります。


まずDOCGからいきましょうか。21のワインもいいのですが、DOCGというのは一応今日はお勉強ですので、少しちゃんとやらなければいけないかなというふうに思います。やはりピエモンテとトスカーナに非常に多いわけですけども、トスカーナが一番早くDOCに、DOCGはピエモンテが早くできた。これが1981年ですね。バローロ、バルバレスコ。それからトスカーナの方はその後ですね。83年、84年ということです。ですから、皆さん知っている名前もあるし、知らない名前もあると思うのですよ。バルバレスコ、バローロというネッビオーロから作るワインはよく知られていますよね。同じピエモンテ地方ですと、他にガッティナーラとかゲンメといった小さいものもあります。それからアスティ・スプマンテというのをご存知ですか。スプマンテの甘いやつですね。それからモスカート・ダスティ、これもDOCGになっています。次にブラケット・ダクイという赤ワインの甘いやつ、アクイの辺で作れるワインですね。これもそんなに量は多くないです。200万本位ですから余り多くないと思います。


 最近白ワインでDOCGになったのが、アレッサンドリアに近いところで作られるガヴィですね。コルテーゼ種を使った白ワインですね。これがDOCGになっています。ロンバルディアですと、フランチャコルタ。フランチャコルタというのは、昔はスプマンテと赤ワイン白ワイン両方を言っていたのですが、今は97年から赤、白はテッレ・ディ・フランチャコルタと言う名前になって、スプマンテだけがDOCG


この講演内容は印刷物としても発行されています。


イタリア研究会報告書No.95

2001年10月26日発行

企画編集 イタリア研究会

発  行 スパチオ研究所・伊藤哲郎

     (目黒区青葉台4-4-5渋谷スリーサムビル8F)

事 務 局 高橋真一郎

     (横浜市青葉区さつきが丘2-48)