イタリアの財政構造改革

第253回 イタリア研究会 2001-06-07

イタリアの財政構造改革

報告者:産経新聞論説委員 岩崎 慶市


第253回イタリア研究会(2001年6月7日 六本木・国際文化会館)

岩崎 慶市 産経新聞論説委員

「イタリアの財政構造改革」


司会

 253回イタリア研究会を始めたいと思います。今日の講師は岩崎慶市さんで す。産経新聞の現在論説の副委員長でいらっしゃいます。財政構造審議会というか財政制 度審議会の審議委員でありまして、最近イタリアを視察されたということで、実は産経新 聞にイタリアのルネサンス財政改革、3回ほど続き物というか、コラムを書かれました。

コラムというか大きな、イタリアの経済構造について書かれまして、そのことでお願いを することになりました。慶應大学の法学部を出られて、産経新聞社に入社されて、社会部 から経済部へ行きまして、財政金融というところが専門でございます。ということは、大 蔵省とか日銀を回られてということで、財政が専門ということでございます。編集局の次 長兼経済部長を経まして、その後現在論説の副委員長で、その前も論説委員はやられてお ります。ということで、今日はイタリアの財政構造改革ということでお話を頂きたいと思 います。当然のことながら、日本の財政というものを見ながらのことでございますので、 日本の財政構造についても触れて頂けるというふうに思います。それでは岩崎さん、お願 い致します。


岩崎 今ご紹介頂きましたように、財政審の視察ということで、私全くイタリアは素人 だったのですが、新聞記者は3日やれば専門家になると、こういうふうにいいかげんな仕 事でございますので、その辺ご了承頂きたいと思います。

 私もイタリアというと、芸術とか文化とかファッションとか、そんなものがまずイメー ジとして浮かぶということですね。だけれども、この財政審が視察したように、今や改革 では日本よりもはるかに先を行っているということなのですね。とにかく改革前は、この イタリアの経済、それから財政とか金融とか、そういったもののイメージというのは、最 悪というふうに言っていいし、世界中の人がそう見ていたでしょう。実際私も、経済での プレゼンス何ていうのは全くないなというふうに感じたことが実際ありましたけど、それ はルーブル合意という為替についての合意があるのですよね。これ1987年、パリのル ーブル宮、大蔵省ですね。そこで合意されたのですが、いわゆる85年のプラザ合意でド ル高是正というのが合意されて、ドル安円高が急激に進んできました。日本にとっては円 高ということですけどね。それが行き過ぎたということで、止めましょうという話し合い がルーブルで行われたのですね。それ取材に行きまして、ちょうどG5かG7に切り替わ る時だったのですね、それは。G7の前にG5をやったのですよ。G5にはイタリアは入 っていない。イタリアとカナダはね。それでG5をやってしまったのですね。そこでもう 事実上全部決定されてしまうのですよね。G7というのは名ばかりでね。だけどもG7に 切り替わるということで、G7もやったわけですよ。その時にG5をやったものだから、 イタリアはパリに来たのですけど、帰ってしまったのですね、頭に来て。このエピソード というか、これ非常に象徴的なのですよね。G7やったけれども、G6になったわけです よ。イタリアなしでやったわけですから。だけどもイタリアいなくても十分にG7は機能 した。しかし、イタリアが帰ったというのは、いかにイタリアというのは誇り高い国であ るかというのをやはりまざまざと感じたわけですね。だからプレゼンスはないけれども、 誇りだけはすごいなというふうに思ったわけです。

 先程も申し上げたように、とにかくこの改革前のイタリアは、G7に入っているけれど も、とにかくG7で最悪ですよ。これはもう財政赤字がどんどんどんどんふくらんで、イ タリアだけ突出してましたからね。当然アメリカもそうでしたけれども、財政と貿易の赤 字がふくらんで、それでドル安が逆に行き過ぎてしまったわけですからね。そういう意味 ではアメリカもひどかったけれども、だけどアメリカは一応経済政策とか、そういうのは きちんと取って、当然ながらドルが機軸ですから、アメリカそういう意味ではドル安にな ってしまっても、世界経済はひどいけれども、アメリカ自身はドルをどんどん吸っていれ ばいいのですから、さして問題はない。イタリアはもう本当にそういう意味では、我々の 眼中にないくらいの国であると。

 それがどうしてつまり改革が始まったのかというところからお話しますと、これちょう ど要するに欧州統合、市場統合ですね、これが93年から始まるということで、その前年 の92年に、市場統合の中で、つまりイギリスというのが非常に当時経済状況が悪くて、 ポンドが安かったと。それで有名なジョイフロストが、あの辺がポンドをうりあげするわ けですね。ポンド危機が起こったわけですよ。それにつられて、イタリアもねらわれたの ですね。つまりリラが暴落したのですね。このリラ暴落からやはり始まっているのですね。なぜリラが暴落したか。つまり、マーケットというのはだいたい連想ゲームで動きます から、ポンドが、イギリスが売られて、じゃあイタリアの方がひどいじゃないのというこ とで、リラの方にいったわけですね。リラがそれで暴落していたと。その原因は財政赤字 ですよ。最大の原因はね。当時の財政赤字というのは、単年度のいわゆるフローベースで すよね。これいうと、GDP比で10%前後ですよ。80年代は10%をはるかに越えて いました。グラフもお配りしたと思うのですけど、これを見て頂ければ、真ん中に線が引 っ張ってありますね。その下の棒グラフですね。財政収支(対GDP比)というのがありますね。これが80年代はもうずっと10%台ですよね。その92年の時にも9・5%。当時日本は2%位ですから、マイナスが、赤字が。当時まだ優等生だったわけですね。まだバブルのあれで、赤字国債ゼロになったりなんかして、良かったわけですけど。今やこれが大逆転しているのですね。ずっとこの棒グラフを見ていってもらえると、イタリアはほぼゼロに近くなっているでしょう。日本は今7以上ありました。G7の中では突出して 、対GDP比の財政赤字が多いのですよね。これはまさにイタリアが改革の10年を過ごしたのに対して、日本が失われた10年を過ごしたと。これ実にコントラストが見事に出ているのですよ。だからイタリアに学べと、こういうふうなことになったわけです。10年前には考えられない話ですよ。誰もイタリア経済なんて鼻も引っかけなかったのが、今やイタリアの方が進んでしまったということなのですね。この財政赤字をどうしても圧縮しなければならないという事情もイタリアにはあったわけです。

 それは99年からユーロが始まりましたよね。これに加盟するには、いくつかのクライテリアがあったのですね。最大の最も重視されるものというのは、この財政赤字のGDP比です。これを、赤字をGDP比の3%以内にしないと、クリアしないと入れませんよというのを、つまりEU各国、コアグループといって、11か国ぐらいですけどね、が決めたわけです。つまり、10%もあったらとてもではないけれども、ユーロに入れない。これはやはりイタリアにとっては、許されないことなのですよ。やはりヨーロッパというのは、ギリシャ・ローマ文明の流れをくむわけですよね。その大本でしょう。だからG7をやったら、イタリアは帰ってしまったわけですから。それだけ誇りが高いわけですから。

だからイタリア人にとって、このユーロに入れないということは、ヨーロッパ人ではなくなるということでしょう。これはやはり最大の動機付けになったのではないかと。実際に向こうで聞いても、中央銀行のエコノミストなんかも言いますよね。そこのところが最大の動機付けになったと。

 そこから92年からですよね。改革が始まったのが。当時アマート、今もそうですね。次ベルルスコーニになるまで、アマートですからね。の時に始まったわけですけれども、 この改革の大枠、どうやって財政規律を確立するのだということからご説明しますと、やはり予算システムが変わったということなのですね。それはここにも書いてありますよう に、経済企画委員会というのを作ったのですね。これは首相をトップに、関係各省の大臣が集まって、財政の3か年計画を作るわけですね。つまり赤字をどうやって減らしていく かというのをね。それに単年度の予算は整合性を持つように作っていくわけです。日本でこれなされてませんからね。大蔵省が財政の中期展望みたいなのを示しますけれども、ま ったくこれは力ありませんから、それで財政を決めていくというシステムにはなっていませんからね。イタリアはこれをやったわけですね。つまり首相がトップ、日本で言えば首相官邸ですよね。ここがリーダーシップを持ったわけですね。したがって、ここですべて網をかけてしまうというシステムを取ったわけです。大枠の網をね。それはやはり非常に大きいことですね。更に歳出をどうやって抑制していくかということを、そのシステムもまた新しく取ったと。ここに書いてあります、僕イタリア語よくわかりませんけれども、 「オブリコ・コペルツーラ」というのですね。日本語にすると、財政確保制度。これどう いうことかというと、新たな歳出を伴う事業については、財源を自分で見つけなさいと。

つまり財源保証のないものについては、新たな歳出は認めませんよということですね。これはアメリカでペアーズユーゴというやはりシステムを取っているのですけど、これを導入したのですね。これとまったく理念的には同じです。こういう大まかなシステム、大まかな網をかけたわけですね。

 じゃあ具体的に10年間、どういうふうな改革をやって来たかということを説明しますと、まず3つに分けられると思うのですね、この改革を大ざっぱに見ると。1つはいわゆる歳出削減、当然ながら先程から申し上げてますね。ここで何をやって来たかと。やはり年金制度改革ですね。これイタリアというのは、僕も行って初めてわかったのですが、高齢化がものすごく進んでいるのですね。ヨーロッパで1、2を争うくらいになっていると 。年金の財政需要というのは、非常に膨大なのですね。やはりイタリア人というのは、年金をもらって暮らすというのが幸せというふうな考え方が、どうも非常に強いらしいですね。改革前は、従って、この年金財政需要がどんどんどんどんふくらんで来ていたわけですね。それをそのまま国債を発行して、財源を確保すると。こういうふうなやり方をやって来たわけです。だからこんなに財政赤字がふくらんでしまったわけですけどね。だから そこのところをまず締めようということがありました。具体的に言うと、支給開始年齢を後ろにずらして行ってしまうとかね。女性は55だったのを60にして、男は60を65 才にするとかね。後、支給の基準、算定金額ですね。これを退職間近のものをとっていたのを、例えば20年とか30年とか働いていた平均を取ってくるとかね。そういったことをやったのですね。

 後やはり公共事業ですね。これ日本で最大の問題に今なってますけど、小泉さんになってから、ここ切り込まなければ、構造改革はできないと。日本の場合は非常にこの公共事業というのは、土建国家と言われるくらいですから、公共事業を地方に持って行って、それで選挙に勝つと。いわゆる政治構造の中に、この公共事業というのは組み込まれてしまったいるようなものですからね。これをやるのは非常に日本も大変ですが、イタリアだって大変なのですよ。これ後で詳しく話しますが。これをだいたいGDP比で見た金額で1%位削ったと。だいたいGDPに占める公共事業の割合というのは、イタリアの場合は4%弱位だったのですね。これを2%台まで落として行ったのですね。日本は今6~7%ありますからね。これも突出しているのですけどね、日本は。これをやったと。

 後は官僚の人件費、お役人の人件費ですね。これをカットした。歳出削減ではそういうところです。

 2つ目としては、当然ながら増収を図らなければならないわけですね。つまり歳出を減らして、入りを多くすると。これはもう鉄則ですから。それでやったのが、増税と徴税の強化です。この増税、日本も97年に消費5%に上げましたが、ただあれは3年前に同じ規模の減税をやってますからね、所得税の。決して増税ではなかったのだけど、あれが原因で景気が悪くなったと、こういう論調をはる人がたくさんいます。私はそう思いませんけれども、そうではなくてあれはもう金融システムそのものの問題であったというふうに私は見ています。まあそれは置いて、要するに、イタリアは完全に増税をやったのですね。一番国民にとって痛みを伴うわけですね。具体的にどんなのをやったかと言うと、付加価値税をやったのですね。それからガソリン税、法人税。税目で言うと5つ位やっていますね。これ大変なことだと思いますよ。これをできたというのだから、やはりすごいなと僕なんか思ってしまうのですけどね。日本でこんなことをやると、今小泉人気がすごいけれども、実際じゃあそんな増税なんかに手をつけたらどうなるかと。つまり各論部分に入ると、だいたい国民は反対してしまうでしょう。それを乗り切ってやったのですね。

 後は徴税強化ですよ。これ徴税強化も後で詳しくふれたいと思います。それで増収を図ったと。

 もう1つは民営化ですね。つまり国有企業の民営化。これはもう本当に後半ですよね。そういう意味では先程から申し上げているように、イタリアというのは、経済のプレゼンスなんて全くないと言われていたのが、要するに計画経済とは言わないけれども、国有経済だったわけですから。それが銀行、保険、鉄鋼、エネルギー、こういうのをどんどんどんどん民営化していったわけですよ。銀行もほとんど国有だったですからね。それをどんどん民営化していったと。民営化して、当然ながら国が株を保有して、それを売却したいと。この民営化による増収効果というのはやはりかなりのものですね。だいたいここに書いてあるように150兆リラにのぼる。日本にすると、10分の1の6掛けですから、10兆円ちょっとにはなるのですかね。これはでもイタリア財政にとっては非常に大きな金額ですよね。今までの当然ながら財政規模小さいですから。

 この3つの改革を継続的に行ってきたということですね。それでやはりマーケットの見方が、イタリアに対する見方が、変わってきたのですね。やはり本当にやったよと。できないだろうと高を括って見ていたマーケットが、イタリア本当にやるのだなというふうに、だんだん見方が変わってきたのですよね。それは金利に現れているのですよ。ここにまた表を見て頂ければわかるのですが、この一番上の折れ線グラフ、長期金利というのがありますね。これはもう80年代は10%を越えているのですね。それで95年位から目に見えて長期金利が下がってますね。これはマーケットがやはり、イタリアは改革をやっているなと。ちゃんと財政赤字を圧縮して行くなというふうに見たからですね。これは経済用語で言うと、この80年代までは、いわゆるクラウディングアウトというふうに呼ぶのですよ。国債を大量に発行して、市中からお金を吸い上げて行くと、当然ながらお金の自給がタイトになりますね。そうすると金利は上昇するわけですね。これをクラウディングアウト現象というのですが、これがつまり80年代まで続いていたわけですね。それはこの改革によって、逆にクラウディングインに入ってきて、つまり交換をもたらしてきたわけですね。長期金利が下がるということは、つまり国債の利払い費が減るということですね。従って、この国債費の激減現象が出たわけですね。これが非常に大きかったですね。

これだいたい、当然ながらこれだけ財政赤字が圧縮されたわけでしょう。もうゼロに近いのですから。この長期金利の低下による財政赤字圧縮効果というのは、だいたい6割に達するだろうというふうに言われているのですね。

 日本の場合、じゃあどうなのかと言うと、確かにこれは余り、長期金利の部分では参考にならないのですよ。なぜかというと、皆さん御存じのように、日本はもう限界を越した低金利でしょう。長期金利もそうですよ。なぜかというと、日銀のつまり金融緩和、量的緩和まで入りましたけども、銀行に金がだぶついてしまっているわけですね。これをつまり企業側からの投資事業、設備投資事業とかですね、これもあまりないということで、銀行はみんな国債買っているわけですね、今。これが一番安全で儲かる方法だと、実に知恵のないやり方をしていると思うのですが、従って、金利は上がらないのですね。今の日本の状況から言えば、当然ながらイタリア並みに金利が上昇していても不思議ではないのですね。だけどそういう状況の、特殊な状況に今あって、金利が上がらないのですね。だけど、何かのきっかけで、経済理論通り、つまり銀行が国債買わないで、別の方に投資、お金を融資したりそういったことをしていった場合に、急激に上がる可能性だってないではないのですね。これは不況ですからね、今。不況下の金利上昇というのは、最悪のパターンですよ。だから今財政改革をしようという議論が出ているわけですね。そうなってしまったら、日本経済はおしまいでしょうということなのですね。現時点では確かにイタリアの金利低下効果というのは、日本にそのまま当てはまるわけではないと。しかし、イタリアがつまり金利低下を実現したのは、まさに改革をやったからですよね。やらなければこういうことはないのですよ。いまだに10%越していたでしょう。この改革というのは非常に大事だというのがやはりイタリア人にわかってきたのではないかと思うのですね。

 それでもやはりこの99年スタートにスタートしたユーロの参加のためのクライテリアは、まだ達成できなかったのですね。そこでやったのが、97年にユーロ税というのをやったのですね。このユーロ税というのは、所得税に上乗せしたのですね、税率を。これ1年限りでやったのですね。まさにユーロ加盟のために増税を、所得税の増税をやったわけです。これで何とかつまり財政赤字3%というのをクリアして、晴れてユーロの仲間入りができたと、こういうふうな道筋をたどってきたということですね。

 しかし、このイタリアが、これだけの改革をやってきたというのは、実に不思議だと思いませんか。改革というのは通常は長期政権、しかも強い政権でなければできない。レーガンしかり、サッチャーしかりですよ。中曽根しかりですね、日本で言えば。それ以降は 、改革らしい改革はできなかった。イタリアも小党乱立でしょう。ずっと連立ですよ。この90年から今まで、首相は8代変わっているわけです。1人で2回やった人もいますけどね。これでやはり改革を持続できたというのは、驚異ではないかというふうに思いますね。

 特におもしろいのは、この首相の中で、やはり改革に最も力を入れたのは、92年に始めたアマート、それとこのユーロ税をやったプローディです。プローディというのは今EUの委員長をやっている彼ですね。このユーロ税をやったものだから、ミスターユーロというふうに呼ばれていたらしいですね。おもしろいことにこの2人に共通するのは、経済学者なのですね。政治家ではなくて。これ両方とも中道左派ですけどね。この経済学者がやったというところが実におもしろい。これはやはりしがらみがなかったのですね。だからやはりできたのだろうと。これまでの、日本の政治家もそうですが、イタリアの政治家はもっとひどいのかもしれないけど、やはり利益団体とか、その辺との腐れ縁みたいなものというのはあったし、汚職もたくさんあったわけですよね。やはりこの2人にはないのですね。学者だから。もっとすごいのは、チャンピという、一番下に首相の在任期間とあれが書いてありますが、93年から94年にかけて、アマートの後ですが、彼は中央銀行の総裁だったのですね。それでしかも閣僚に政治家をまったく起用しなかったと。官僚OBとか、中央銀行のOBとか、後は学者とかですね。そういうので組閣したと。なぜならば、選挙制度改革をここでやったのですね。政治家にはできない。しがらみがあって。それをやはりチャンピという人はやったわけですね。今は大統領ですね。だから既存の、旧来型の政治家にはなかなか改革はできないのだなと。そういう意味では今小泉さんがなっ て、いわゆるこれまでの自民党の本流とか、違う傍流から出たために、しがらみがあまりないということでは、改革、だから彼はあんなことまで言えるわけですよね。これまでの 、つまり自民党本流の中を歩いてきた人間には、とても言えないことだと思いますね。あの構造改革というのは。しかも今経済財政諮問会議というところで、その構造改革、つまり財政、経済の構造改革について、青写真を今書いてますね。6月末にそのシナリオが出てくるわけですが。ここも政治家ではない。特に学者、それから民間の経営者ですよね。そういう意味ではイタリアに似てきたのかなというふうに思いますけども。だから旧来型の利権構造とかシステムとかを、やはりどう断ち切るかというのが、やはり最大のポイントであったなと。このイタリアを見てもね。そういうふうに思いますね。

 じゃあどこがすごいかと。先程増税の話もしましたけど、やはりイタリアといえば、アングラ経済。ここにやはりメスを入れられたというのは、非常におもしろい現象だなというふうに思いますね。これアングラ経済、非常にイタリアは有名ですよね。日本人もだいたい知ってますからね。あそこはアングラ経済だというね。アングラ経済なんていうのは経済ではないみたいにばかにしてますけれども、だけどやはりイタリアのアングラ経済というのは、GDP対比で見ると、やはり3割位あるのではないかと。これはやはり経済、国を左右しますよ。いくらアングラとはいえ。やはりそこに手を入れて、改革していくというのが、必要だし、大変なことだけれども、必要だったのではないかと。日本の場合、1割行くか行かないか。この前、どこかのシンクタンクが5~6%というふうなことを、GDP対比でね、出してましたけども、イタリアで26%位というのを出してましたね。

日本も1割位あるから、ここのところをやるとかなり効果、特に税収の面では効果が出てくると思うのですが、本当にイタリアはいい例ですよ。特にアングラ経済の中心になっているのは、南部、マフィアです。私もマフィアというのはどの程度すごいのかよくわからなかったけど、どの程度イタリアの中で存在感があるのかわからなかったけど、ちょうどその視察に行っている時に、エスプレッソという週刊誌があるのですが、御存じの方いらっしゃるかもしれませんが、これはリベラル色が非常に強い。グレードはどの程度か知らないけど、そんなに悪くないグレードの雑誌だということですが、驚いたのは、この表紙に、これが新しいマフィアのボスだというスクープ写真が出ているのですね。これは非常に驚きましたけど、ボスの写真がスクープになるという。日本で言えば、じゃあ山口組はどうなのということになれば、みんな山口組の親分なんか全部写真ありますよね。新聞社みんな持ってますよ。だけどこれがスクープになるというのは、実におもしろい現象だなと思ったわけですよ。つまり、それだけマフィアというのは実態が知られないということでしょう。その表紙だけではなくて、その特集記事の中を見たら、これまでのボスというのも、この新しいボスの前のボスの写真も出ているのですよ。だけど、何か変だなと思ったら、これコンピュータグラフィックか何かで、合成というか、作っているのですね。なんで作るのかと思ったら、40年前の写真しかないらしいですね。従ってマフィアというのは、本当に実態がわからないのだなというふうに思いました。これは中央官庁、例えば公共事業省とか、国庫省、こんなところで聞いても、いやわからないからマフィアなのだよというふうな言い方をするのですよね。それ位やはりすごいのだなと思いました。やはりこういうアングラ経済にメスを入れたというのは、非常にすごいと思って、ここにつまり徴税力を発揮したわけですね。

 これまたおもしろいと思ったのは、あそこに「フィアンマ・ジャッラ」という、イタリアで黄色い炎と訳すらしいですが、これ財務警察ですね。日本にはない。これなんか6万5千人位いるらしいですね。ここが本格的な徴税に乗り出したのですね。歴史を聞くと、サルディニア王国の時代からこのフィアンマ・ジャッラというのはあるらしいのですが、もともとは水際、関税とか密輸とかそういうのを取り締まっていた組織らしいですが。ここが本格的な徴税に乗り出して、あそこはパトカーも持っているのですね。この黄色い炎のマークを帽子につけて、肩章なんかにもつけてますけどね。パトカーに乗って、ピストルまで持ってますからね。まさに警察、財務警察なのですね。これが国庫省とか、役所のところに何人もいますからね。そのパトカーも置いてあるし、彼らは当然ながらマフィアの課税、徴税に乗り出したわけですが、さらに一般のレストランとか、そういうところまで本格的に乗り出していったと。領収書まで客からチェックしたとか、そこまでやはりやっていたらしいですね。これで増収効果というのは、すごいのですよ。97年、つまり最後の切り札でユーロ税をやって、ユーロ加盟を果たしたわけですが、その97年にこのフィアンマ・ジャッラという黄色い炎が上げた増収効果というのは、9兆リラに上ったと。

全体で増収が25~6兆リラでしたから、その中の9兆リラを占めたというのですね。これはユーロ税が11兆リラ位ですから、ユーロ税に匹敵する位の増収効果を上げたのですね。これは非常に大変なことだなというふうに思いましたね。

 後はやはり、マフィアだけではないのですね。イタリアのアングラ経済というのは。つまり一般の事業者、個人営業者、この辺もほとんどやはり税金を払ってなかったらしいですね。従って、おもしろいのは、この業者の団体と、例えば弁護士とかですね、会計士も含め、後八百屋さんとか肉屋さんとかですね。そういうところの協会団体がありますね。

そこと財政当局、税務当局が協定を結んだのですね。どういう協定かといいますと、つまり、これ位の規模で仕事をやっていれば、最低これ位の所得があるでしょうと。いわゆるみなし所得ですよね。それを一番最低限に設定したのですね。ここがみそですね。最低限のみなし所得に応じた税金を払えば、税務調査はいりませんよと。実に甘い、日本から見れば甘いのかなと思いますが、これも大変なことだったのだろうなと。それでやはり税収が2倍近く上がったといいますから、いかに税金を払っていなかったかということなのでしょうね。だけどこれをやったということがやはり増収効果に大きく貢献したということだと思います。

 もう1つは先程から申し上げている公共事業。当然マフィアも絡んできますけどね。この公共事業の方に絡んだ話で、ここにも少し書きましたが、イタリアにはタンジェント・ポリという言葉があるそうなのですね。このタンジェント・ポリというのを直訳すると、袖の下都市というのだそうですね。いってみれば収賄都市ですね。贈収賄都市。そういう言葉があるというくらいに、贈収賄が盛んであったと。更にこの公共事業絡みで言うと、ほとんど南部を中心に、南部に公共事業がだいたい4割いってますから、これは国庫省で聞いたのですけど、財政当局ですよね、南部につまり公共事業をやる時には、これは政治的な動機であると。従って、公共事業が果たす波及効果とか、そういったものは一切考えていなかったと。まったく効果を無視して、ただやることが仕事だったというふうに彼らは言っていました。それで生まれた言葉というのが「砂漠のカテドラル」という言葉らしいのですね。これはだからまったくの失業対策であり、所得保証であり、そういう意味があったわけです。だから計画もへったくれもないのです。ただ金をやるのですから。で、物を作らせるわけです。日本でも箱物、箱物といって、施設は作ったけれども、運営ができないとか、日本もありますけどね。イタリアの場合はもっとひどくて、例えば病院を南部に作る。で、途中まで作ってやめてしまうとかね。だから建物の形だけできて、中身がまったくないとか。それを砂漠の大聖堂、カテドラルとこういうふうに呼んだらしいですね。そういうのがあちこちにたくさんあったと。改革前はですよ。従ってここにメスを入れたわけですね。

 まずそのメスの入れ方というのは、事前評価、つまり公共事業の例えば何か道路でも何でも作る時に、これはどういうふうな効果を発揮するかという事前評価を徹底している。

更に、工事に入る前に、建設業者の入札制度。前はほとんど地元のあれでやっていたらしいのですね。後はもう利害が絡むそういう業者ですね。それなんかがすべて牛耳っていたということです。これを入札方式で徹底したと。これはEU各国からも参加できるようにしたと。従って、競争原理がここで働くようになってきたわけですね。おもしろいのは先程いったマフィア対策で、入札に参加する際に、マフィアとは関係ありませんよというふうな証明書を財務当局から得た業者しか入札に参加できない。その証明書の義務づけを行ったのですね。とにかくそれでもわからないというのですね。公共事業省の局長さんに聞いたのですが、それではマフィアは完全に入れなくなったのかと。いや、それでもわかりませんよと。かなりなくなったと思うけど、わかりませんと。わからないのがマフィアなのですと。こういうふうに答えてましたけどね。だけどかなり透明化はされてきたと。

 後はやはりこの公共事業に手をつけられたというのは、経済理論的に言えば、あそこにはケインズ的な考え方がないのですね。つまり日本の場合は、景気が悪くなる、じゃあ事業を創出しましょうと。そのために公共事業をやりましょうと。これがだいたい公共事業に結びついていく議論ですけど、まさに建設的な議論ですよね。これがイタリア、元々ない。ヨーロッパにもないのですね。アメリカもないです。日本だけと言っていいくらいですけどね。元々公共事業がGDPに占める比率というのは、先程申し上げたように、その改革前でもイタリアはGDPに占める比率が4%弱位でしたから。日本の場合は6~7位いっているわけでしょう。ヨーロッパもだいたい、イギリスもそうだし、フランスもドイツもみんなそうです。だいたい2%からせいぜい3%。これはやはりどんどんどんどんユーロ基準をクリアするために、各国とも下げて来ましたからね。今はほとんど2%位になっていますね。だからそういう経済理論が存在しなかったというのも、非常に大きいのかなと。もちろんローマ時代から使われている下水道とか道路があるとよく言われますけどね。だけど要するに現代的な公共施設と言うか、公共事業対象の施設については、やはり非常に遅れてますよね。それでも公共事業をカットしていったということですね。これ非常に大きいのではないかと。

 それでユーロには加盟していったわけですが、更にまだ改革は続いたわけですね。やはり最後の仕上げにやったというのが、地方財政ですね。これはまさに南北格差の問題、根源的な問題にも触れてくるわけですけども、ここにやはりメスを入れてきたと。日本もそうです。地方と都市の問題というのは非常に重要で、これから小泉政権はここに乗り出していくし、財政審でも重大な議論になってますけれども。特にイタリアの場合、日本以上にこれが格差が激しいということです。とにかく北部のロンバルディア州というのがありますね。ミラノがあるところですが。あそこの州政府のお偉いさんたちに聞くと、もうとにかく不満がすごいですね。だってあそこはもうイタリアの中の、イタリアは20州あるわけですが、人口であそこが15%位占めるのですか、生み出す付加価値の3割近くをあそこで占めてしまうと。ロンバルディア平原ももちろんそういう地の利もあるけれども、まさにあそこは産業の中心ですよね。従って3割位の付加価値を生み出していると。しかし、それを自分のところで使えないと。これは納税額で行くと、もうだんとつにあそこは多いわけですね。国税、それから地方税含めて。国税に対するあれも多い。改革前は地方税まで国庫に入っていた。いったん国庫に入れて、それを配分していた。こういうシステムだったのですね。そうすると当然ながら、自分たちが払った税金は、全部南部が吸い上げていってしまうではないかということで、せめて3割は、自分たちの州で払った税金、地方税、国税含めて、その3割位はうちで使いたいというふうに彼らは言ってましたけど ね。この南北格差というのは非常にまさに政治の問題なのだろうと思うのですね。失業者数を比べてもとにかく南部は20%越しているでしょう、今も。ロンバルディア、ミラノ周辺は3%か4%ですよ。この格差たるや、日本の格差なんて全然問題にならない位の格差がありますよね。ここにやはりもう少し、払った税金、つまり負担ですよね。負担と受益、それによって得る利益、公的な、それをもう少しきちんとしましょうよというのを、イタリアはやったわけです。日本も本当に必要なのですけどね。

 この切り札になったのがIRAP、地方生産活動税と言うのですが、これを98年に導入したのですね。税率は4・25、これ標準税率ですね。その課税ベース、課税対象ですね、何を基準にするかというのは、その企業の利益だとか、支払給与の額だとか、あと支払利息だとか、そういうものを基準にして、税金をかけていると、こういうふうな方式ですね。ただこれだけこの新しい税金を導入して、つまり増税というだけではないのですね

。当然ながら、それまで健康保険の企業負担分があったわけですが、それをやめてしまうとか、地方の法人税をやめてしまうとか、そういったことはもちろんしています。ただネットで見れば、増税になりますよね。これを導入した。これは州税です。つまり州の課税自主権というのですか、州が自分で税金をかけて、自分で使う。そういう方式です。

 これをやはり導入したというのは、この地方財政改革においては、非常に重要な役割を占めるのではないかと思うのですね。これは南北問題にやはり根源的な問題に乗り出したという理念というのは、どういうところにあるのかというと、やはり競争的連邦主義というのを、イタリアは取り出したのですね。それまでは連帯的連邦主義。統一的連邦主義と言ってもいいのですが。イタリアが統一されて非常に間もないわけですし、間もないと言ってももちろんあれですけど、明治以前くらいでしょう、統一されたのは。南北かなり特徴があると。更にやはりその都市国家の何割というのは非常に強い。従って、統一的連邦主義、連帯的連邦主義というのは、国家統一のために必要であったのだろうなと。まさに南に金をそれだけ流していったのは、政治的な背景ですよね。でもそれだけではもうイタリア全体が沈んでしまうのではないかと。もう少しやはり地域同士で競争したり、行政サービスを競争したり、あと自分の責任で、その州を運営したり、自分で払った税金に見合う公的な利益を還元してもらうというふうな理念を出してきて、つまりこの競争的連邦主義という考え方が出てきたのですね。これは当然ながら州の財源が、独自財源、州財源ができるわけですから、行政権限も地方に移していきつつあるわけです。いわゆるよく言われる地方分権。日本の地方分権は非常にいいかげんな地方分権ですけど、ここはやはり税源と行政サービスの権限委譲というのは、対になってなされてきはじめたということです

ね。特にこのIRAPというのは、今標準税率4・25で、上下1%は各州が動かせるのですね。そうすると、税金の安いところに企業は行きますよね。高いところへは行かない 。だけど税収がないから、IRAPを上げる。そうしたら企業は逃げる。そういうことがこれからやはり起こってくるだろうと。だから南部もただもらうだけで、ただ国からお金をもらうだけではとてもやって行けないのではないかということですよね。これもやはり大変なことだと思うのですね。日本もたぶんその方向に行くでしょうけども、だけどやはりこのロンバルディアの州政府なんかに言わせると、もう南部もおんぶに抱っこでやって行くような時代ではないのだと。自分で責任を持って自治体を運営して行かないと、新たな活力も生まれないと。責任を持てというふうなことを盛んに言ってましたけどね。これは今後どういうふうになって行くかというのは、非常に難しい問題で、予測もなかなかつきにくいかもしれませんね。後おもしろいのは、当然ながら、地方は自分で責任をどんどん持って行くわけですから、お金を効率的に使わなければならないということですね。

 このロンバルディアで聞いたら、おもしろい制度で、プロジェクト・マネージャー制度というのを作ったのですね。これは日本にはないですけども、例えば公共事業をやりますね。ミラノのあれもそうですよ。最後の晩餐がある教会。あれ完成しましたけど、あれもプロジェクト・マネージャー制度でやったらしいですね。これはどういうことかと言うと 、そのプロジェクトに1人のマネージャーを、役人ですよ、が全責任を持つのですよ。それで計画から施工、運営まで、全部そのマネージャーが責任を持つ。従って、いかに住民のニーズを取り入れるかとか、いかに工事を安くさせるかとか、そういったことも全部彼らが責任を持つのですね。うまく行けば給料に反映されると。そういうインセンティブをこのプロジェクト・マネージャーに与えるわけですね。だからこのプロジェクト・マネージャーというのは非常にやりがいがあると。このマネージャーの人に聞きましたけどね。

そういうふうな制度も作っているのですね。これ非常に日本にも参考になるなというふうに思いましたね。そういうふうにやって行かないと、やはりもう役人というのは、とにかく与えられた仕事だけやるというふうな、日本でもそういうあれでしょう。典型的な例がいくらでもあるでしょう。でもこういうふうなやりがいと、給料に反映されるとか、人事に反映されるとか、そういうのがあるとやはり一生懸命になるわけです。こういう制度を作るというのは、非常におもしろいなと思いました。

 後はやはり地方財政を健全なものにするということで言えば、国と地方が安定化協定というのを結んで、やはり各自治体がどれくらいまで財政赤字を減らしていけるのかというふうな目標を立てさせるということをやったのですね。これまだ日本ではやられてませんね。後先程申し上げましたけど、例のオブリコ・コペルツーラという制度ですね。これも地方に導入したと。うまく、つまり目標を達成したり、財政赤字の削減に成功したというふうな自治体には、国庫から融資しているお金の金利を負けるとか、そういうインセンティブも与えているわけです。こういったことで、この地方の財政赤字をどんどん削減していっていると。基本的なことを申し忘れましたけど、先程から言っているGDP比の赤字3%と言っていますが、GDPの赤字というのは、国だけではありませんからね。これ一般政府、今だいたい世界中この考え方を取っていますが、一般政府と言って、中央政府、それから地方政府ですね、それから社会保障、これを全部ひっくるめたものの赤字ですからね。そこのところを頭に置いておいてほしいと思います。それでどんどん削減しているわけです。当然ながら、地方の自主財源、IRAPみたいなものが導入されたわけですから、国から要するに地方への交付金ですね、これも当然ながら削減します。日本で言う地方交付税、交付金ですよね。日本の場合は国税の一定割合、まあ3割位ですが、主要国税の、所得税とか主要国税3税の3割位を地方交付税にして、地方に渡しているわけですが、この交付金を削減していくと。もう実際に97年から98年にかけて、この1年間だけで、つまりIRAP導入ですよね。これで地方の要するに一般財源、地方が使う一般財源ですね。これの中に占める国からの移転の割合というのは、97年までは55%もあったのですね。これが98年には37%まで下がったと。これはやはり非情な大改革だと思いますね。日本の場合、とにかくひどいところだと、今一番ひどいのは島根かな、ここが9割近くそうですよ。だから自分たちが払う税金は自主財源ですね。これ本当に少ないですね。あと国から移転されているわけですから。東京は御存じのように、全部自主財源です よ。だから大都市が払った金が、みんな地方に行っていると。こういうふうな構造に今なっているわけです。ここをどういうふうに、イタリアもこういうふうにしているわけですね。あの南北格差が激しいですよ。日本はイタリアほど激しくないですよ。失業率だって、所得水準だって。にもかかわらず、イタリア以上に財源の再配分というのは、アンバランスになっているわけですね。ここのところは非常に重要なところですよ。

 こうしてイタリアの改革は進んでいるわけですが、今後の問題点、最後に触れたいと思いますが、皆さん御存じのように、ベルルスコーニが復活したわけですね。彼のスキャンダルとかそういったものは別にしてですが、ポピュリストであるのはまず間違いないのでしょう、よく言われるように。そこにやはり最後の心配な点があるのだろう思います。ポピュリストというのは、つまり財政面でもですよ。彼が選挙中に行ったのは、所得税の大規模減税ですよね。税率2段階にしてしまうとかね。後当然ながら、公共事業についても言ってます。この高速鉄道、新幹線ですよね。これミラノからナポリまで走らせるのだとか、後高速道路もバンバン作って行くよと。後はシチリアに、イタリア半島の間にあるメッシーナ架橋に橋をかけましょうと。こういうことも、中道左派もかなりその辺は行ってましたけどね。オリーブの木の方もですね。これが本格化してくると、そうすると財政規律の緩みが生じてくるのではないかなと。これまで、つまり3年計画とか長期計画の中で 、イタリアは2003年までにプライマリーバランスと言って、つまり国債費を除いたものですけど、国債関係を除いて、簡単に言えば、普通の歳出、一般の歳出を税金で賄いましょうよということでしょうね。これをプラスに転じるという計画を立てて、これはEUにも約束しているわけですね。これがどうなるか。それから長期債務、これGDP比、先程はフローの話でしたけども、これはストックというか、残高ですね。長期債務のね。これが今108%くらいまで、つまりGDPとほぼ同じというか、少し多いくらいのところまで下がってきたわけです。これ前は130くらいありましたからね。もっとも今日本も128あるのですよ。もうイタリアの方が全然いいのですよ。日本の長期債務の、残高についても最悪ですから。これをEUに60%くらいにして行くというのが、これ大体EU各国の目標ですね。これが果たしてこういうふうな財政運営がなされて、達成できるのだろうかというのが1つ不安だと思うのですね。ただ税制について言えば、同時に特別控除の部分、かなりイタリアの場合は日本以上にあるらしいですね。日本もかなりありますけ ど。これを廃止して行くというふうにベルルスコーニは言っているのですね。したがって 、税率は下げても、特別控除の分を廃止して行くと、税収はそんなに下がらないのではないかという見方もあるのですね。

 さらに先程申し上げた公共事業の話ですが、これはEU各国に比べれば、圧倒的に遅れているのですね。TGVもないしね。フランスにはあるけれども。そういういわゆる経済活動をスムーズに運んで行く現代の経済活動をうまくやっていくためには、それなりのインフラというのは、当然ながら必要になってくるわけですから、EUとの競争上もやはりやっていかないと、企業が逃げてしまうと言うことがあるわけです。市場統合がなされ、ユーロもでき、ユーロも来年から流通し始めるわけでしょう。競争はさらに激しくなって 行く。この減税にしろ、別にイタリアだけではないのですね、今。EU各国、減税競争に入ってますからね。これはシュレーダーもそうだし、フランスもそうだし、ブレアもそうですよ。みんな減税を打ち出しましたね。これはアメリカ景気が急速に減速して、その影響をもろにくらっている、日本ほどではないけれども、それが1つありますけれども、ヨーロッパ自体がちょっと為替の関係もあり、ここのところかなりヨーロッパ経済自体が落ちているのですね。したがって、減税でそれを支えようというのがあります。マクロ的に見れば。後はやはりEU各国間の減税によって、企業にどうアピールするかというこがあると思うのですね。だから何もこれイタリアだけの話ではない。

 後はやはりベルルスコーニが勝ったというのは、10年改革やって来て、一応財政健全化というのが、一応ですよ、一応達成されたと。ほぼプライマリー・バランスもゼロに近づいているわけですから、ほぼ。それで改革に対する疲れというのがやはりあったのかなと。後はやはり中道左派が夢を、改革これだけやって来て、じゃあ後俺たちにどんな夢をくれるのというのを出し切れなかったというのがやはり大きいというふうに見られてますよね。中道右派が勝ったのはですね。そういうところから見ると、スキャンダルは別として、イタリアだけの問題ではないなというふうな感じはします。後やはりこの財政問題で行けば、先程申し上げましたように、この地方分権がどういうふうに機能していくかと。

競争的連邦主義ですね。しかし、これは余りやってしまっては分裂していくわけですね。 今回中道右派に北部同盟が入ったように、北部同盟というのはもともとロンバルディアのあそこを中心にして、つまり独立運動を、北部独立というのが当然だったわけでしょう、昔。今は余り言ってませんけど。今は移民の排斥というか、治安の問題とか、その辺のところを言っているらしいですが。そうすると、なかなかこの競争的連邦主義を急激に押し進めていった場合に、イタリア国家としての求心力というのかな、その辺のところがどうなのかということがありますので、この旧来の連帯的、統一的連邦主義と、どうバランスさせて行くのかと。ここがやはり最大の問題に、これは財政も含めて、なるのではないかというふうに感じています。以上、大ざっぱな話で恐縮ですが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

司会 ありがとうございました。それでは早速質問を。

質問 どうもありがとうございました。2つ質問したいと思います。1つは、改革になったのが、プロの専門家であったということが、1つの成功の要因であるというお話でしたが、その場合に、それを改革、経済学者でもう1つのこととして、アングラ経済のところで、公共投資の問題の捕らえ方として、イタリアのエコノミストというか、経済のプロの中に、経済理論というのが余り浸透してなかったというお話でしたけど、それでしたらこの2人、それからこの改革を担った理論的な裏付けというのはどういうところにあったのでしょうか、というのが1点です。それからもう1つは、僕の感想だと、1つは日本との関係で言えば、ちょうどこの時にやはり利益配分政治、既存の政治の中軸であったキリスト教民主党が崩壊したということが、自民党も危なかったですが、完全復活してますから、これがやはり決定的に政治の要因の中では違ってきているのではないかということが印象的には思っていますが、その絡みで、最後に触れられたことなのですが、こういうふうに10年間財政改革が一応の成果を上げてきた段階で、更にEUの現物が流通する中で、競争が激しくなってくるという中で、イタリアの要するに経済界、財界のトップというのは、ベルルスコーニの登場というのを、そういう視点から見て、どういうふうに評価しているのか。むしろ、国際的な市場のマーケットの声としては、中道左翼政権の継続の方が、安定したEUとの関係の中では、経済運営が維持できるのではないかという点から、エコノミストを筆頭に、ベルルスコーニ批判が展開されていたわけですけれども、イタリアの財界のトップの方ではどういうふうに思っているのかという点。外との関係で、先程改革のところの力関係のところであれだったのですが、日本でも、僕はもう1つ政治改革が日本と大きく違ってきているのは、日本の場合にはかなり民間政治臨調みたいなのができて、財界と一塊になって、選挙制度改革を行って、財界が政治的なパワーとして、かなり力をもっていると思うのですよね。それに比べてイタリアの場合は、財政改革の中で、政官財の関係の中で、政治のパワーというのがDTGが倒れてできなくて、官吏はそもそ もイタリアはそんなに強くないというふうに言われてますから、もう1つの官である財の影響、この政財界改革の中での果たした役割というのは、どういうところにあるのかというのが質問なのですが。

岩崎 これまさに改革の理念、理論付けというのは、市場経済理論ですよね。今つまり経営的な理論で、今経済運営をやっているところは、先進国ではもうほとんどなくなってしまった。アメリカみたいに、フリードマンを最初に、市場万能主義というのは非常に行き過ぎだという反省が出てきてますけど、だけど、もう経営的な考え方で、財政面をしているというところはないのではないでしょうか。後の政治的なキリスト教民主党ですか、まさにそうだということらしいですね。私も政治の専門家ではありませんけども、これがなくなったのは非常に後悔したのが大きいというふうな話しでしたね。あと、ベルルスコーニと産業界ですか、これはだけど産業界、これ財界のパワーの問題につながるのですが、この前経団連という日本の経団連に匹敵するような産業連盟というのがあるのですが、イタリア産業連盟、あそこのエコノミストなんかとも話しましたけども、要するに、財界のパワーというのはもともと、つまり基幹産業は全部国有だったわけでしょう。だから財界らしい財界というのはないのですよ。あと中小企業、ヴィトンだとか、そういう企業としては非常に資本としては小資本ですものね。そういう意味では、この財界というのはあまりないのではないですか。だからここで財界パワーがどう発揮されたかというのは、受け身でしょう、ほとんど。だと思います。

質問 大変ありがとうございました。基本的に日本とイタリアは大きく違い過ぎますの で、ただ技術的な問題では、イタリアがやれたことは日本でやっておかしくはないことなのですが、やはり一番日本と違ったことは、1つは政治の問題。これも非常に、タンジェント・ポリというのが92年から93年にかけて、ここでイタリアで有名な話でございますから、91年のマーストリヒトの時に、96年位から政治統合、それが起こるということが決定し、その段階で、これが非常にむしろ新聞社の方に聞きたいのですが、その段階で、92年の末辛93年にかけて、マニプリートの非常なタンジェント・ポリの摘発が、91年のマーストリヒトを、これはもう確定で、全員わかっていることで、イタリア自身の全国民が非常に不安を持っていた段階で、偶然だと常に言われているのですが、92年の末から、汚職の摘発が起こったと。その時ここに政治、クラクシとアンドレオッティが中心になっている、非常に汚職と言われている人間が、両方とも摘発され、クラクシはついにイタリアに帰ってこれなくなったわけですが、それがむしろ偶然なのか、やはりそれを意識した国民がやったのか、その段階で92年末から93年に、これはむしろ、僕先月政治の話を聞かなかったのですが、92年以前の国会議員のたぶん7割位はもう全部変わっている。これが非常に重要な、これがですから先程のいろいろな南部、あるいはいろいろな改革、政治というものがイタリアではどうでもよかったもので、それをこんなに変えられたというのは、もちろん純粋な問題よりも、この政治家が7割位が、もっと変わったと聞いてますから、92年以後は。その段階でいろいろな問題を起こす時に、政治的な抵抗が非常になかったのではないか。そういう感じを非常に強く持つことが1つと、もう1つは、実は93年、先程岩崎さんは、EUに入らないのはやはりイタリアのプライドだということをおっしゃいましたが、私はやはり、北部のいわゆる民間の企業家が、これに入らないと絶対に置いてけぼりをくうと。少なくともフィレンツェから北ですべての経済は賄われてますから。その人たちが、基本的にこのユーロの通貨に入らなければ、イタリアはつぶれるということを全員が自覚したことによって、これだけの、めちゃくちゃに国民は苦しい、改革をみんな文句を言いながらもついていったと。これが非常に重要な、この2点が重要な部分ではないかと、そういう意味では日本へ、私自身はこの技術的な問題は非常に日本でも適切にやろうと思ったら理屈は非常に合うことですが、日本自身が、国民自身がこれだけのことに耐えられるようなことができそうもない。それをイタリアは耐えてきた。そのもう1つの3点は、実はイタリア人の経済自身が、非常に自主的にとんだ経済運営をしている。それ自身は何かと言うと、実はここで国営企業なり、あるいは少しのいくつかは、いわゆる日本的な補助金とか、あるいは特殊法人というか、それにつながっている人達、北部には非常に少ない。むしろちょっと悪く言いますと、先程、国庫庁、その他にいろいろな質問をしてきて、あいまいとしてきたと言いますが、イタリアは十分前から、国家公務員の7割は南部から来ている人と言われてますから、彼ら自身に質問しても、彼ら自身の元へ返事が来てる。むしろそれ自身が今まで問題になったのではないか。

だから、そういうような、特にアマートから以後は、政治がまったく変わってしまった。政治というか、国会議員をはじめ、政治がまったく違ってしまったという、そういう意味では、ベルルスコーニ自身でもそれ以前は政治家ではありませんから、そういうものすご い、国会議員を変えたというのも、最終的には国民の投票なわけで、そういう意味では、 イタリア国民自身が非常に、国民と言ってもほとんど北部の人達だと思いますが、その人たちが相当の危機感を持って、これを重要視してきたのではないか。そういう意味では、もう調査されて、政府へご答申される段階で、むしろやはり日本の国民に対して、国民の何割かがここにぶら下がってきているわけですから、その1つとやはり政治家の人に言うのは難しいでしょうけど、イタリアが同じことをしながらも、イタリアの国会自身が大きく変わってしまったのだということが、大きな変化ではないかということを感じております。そんなところです。ご説明非常にありがとうございました。

岩崎 まさにそうらしいですね。政治の汚職と改革というのは、非常に結びついているのですよね。それが意図的に行われるかどうかというのは、僕もよくわかりません。ただ、チャンピの時に、閣僚を、政治家ではないのを全部起用していったというのは、もう起用する政治家がいなかったという側面もあったと聞いていますけど。後やはりまさに国民だと思いますよ。国民のモチベーションというのですか、これはまさに、それは経済的な問題にしろ、やはりユーロに入らなければ、それは生きていけないという、それはあると思います。やはり改革をやって、目に見えてつまり税制赤字とか減って、金利も下がったと。つまりこれだけの増税をやり、歳出を削減しながら、一応は2~3%の成長はずっと維持してきた。これはひとえにやはり金利、長期金利だと思いますね。そういう意味からすると、日本にそのまま、このイタリアの改革を当てはめた場合に、国民の動機付けがどこにあるのかということになると、つまり国民を説得的に改革に立ち向かわせるというふうなこの手法が、イタリアの場合はまさにユーロがあれでできたわけです。金利も下がり、それで経済は何とか2~3%の成長を維持してきていたわけです。日本の場合はここのところが非常に難しいなと、私も感じているのですよ。このまま行ったらだめに決まっているというのは、みんなだいたいわかっているのではないかと思うのだけども、そこをどういうふうに、国民全体が納得して、改革を支持して行くと。今はそんな8割なんておばけみたいな支持率でしょう。あんなのはわかっていないからそうしているだけの話でして、あんな高い支持率があるはずがないし、それこそポピズムなのかファシズムなのか知らないけど、そういう数字ですよね。あれはまったく信用してませんけど、だからどういうふうにやって行くかというのは難しいなと、これは1つのヒーロー的なカリスマ的な、小泉さんはカリスマ性があるとはね。ただミスターユーロといわれたプローディもカリスマ 性はないというのですよね。まさにそれは国民が、この改革の必要性と改革をもたらす利 益を、国民がわかったからできたのだというふうな言い方を、イタリア銀行のエコノミストはしていたわけです。カリスマ性がなくてよくできたなというふうに思ったわけですよね。後は確かに官僚の質は話していて悪いなと。頭が悪いなというふうに思いましたが、日本の官僚と比べると、日本の財務省の彼らと全然やはり違う。ただイタリア銀行、それから大学の先生、これはやはり優秀だなと。イタリア銀行と大学の先生に話を聞かないと、全体は捕らえられないくらいに、中央官庁の官僚の質は確かに良くないなというふうに私も感じました。南部をどうするかというのは、そういう意味では、EUの予算を、金をどれだけ南部に引き込むかと。これに最大の力点を、イタリア政府はこれから置くんでしょう。そういうことだと思います。

司会 ちょっと質問したのは、ちょっとはずれるのですが、私実は新聞記者を昔やっていまして、小泉さんを知らないわけではないのですが、あの頃は予算委員会の理事だったのですが、歴史小説とかそういうのは読むのは大好きなことは知っているのですが、あの人に経済理論というのはあるのだろうかというか、昔予算委員会の確か理事、僕が取材した時、そうだったのですが、逆に言うと、当然大蔵省とか日銀回られたあれで、小泉さん そっちの属議員の方でしょうから、経済書を一生懸命読み捨てる経済理論というものを、一生懸命勉強する人なのだろうかと。歴史だけの人かということが、ちょっと個人的なあれですが、ちょっとその辺の経済改革が本当にできるのだろうかということを含めて教えて頂きたい。

岩崎 これはもう、毎週私の名前入りのコラムがあるのですが、新聞に。そこでも書いたのですが、別に総理に経済理論なんて必要ないよと。じゃあサッチャーは経済理論はあったか、レーガンはあったか。ないですよ。どうやってつまり、人間、つまり国民の生活システム、意識、これをどういうふうに持って行くかという政治哲学があればそれで十分ではないか。後は経済のシナリオ作るのはエコノミストがやればいいのであって、別に総理に経済理論なんてまったく必要ないと、僕は思っているわけです。

司会 内輪の話で、小渕総理が登場する前の秘密の会議で、竹下さんが、おまえは経済は知らないからやめろと、今経済がこんな状態が悪いと、いう時に、小渕さんが立ち上がって、冗談じゃないと、ここまでこんなに我慢して、中曽根さんと福田さんの下にいて、おれにそんなことを言うのかとどなり返して、竹下さんがあきらめて、総理大臣になったという話を聞いたことがあるのですが、経済を知らなくてもやって行けるという形で解釈していいということですか。

岩崎 じゃあ竹下さんは経済を知っていましたかと、こういうふうに私は逆に質問したいですね。わかりませんよ、あの人。プラザ合意の時に、じゃあ竹下さん、行きましたよね。彼は円のレートをどの辺まで容認していたのかと。そんなものまったく容認、あれでしょう。彼らの頭の中に、水準は180円位のものでしょう。そこまでしかたぶん知らなかったであろう。従って、彼には国際金融なんかもまったくわかっていなかったのではないかと、私はこういうふうに思っていますけれども。財政についても、確かに一総理、一 仕事ということから言えば、政治家として消費税を入れたということは非常にやはり歴史 に名を残したのであろうと。ただ、財政理論はあったかと言えば、彼に財政理論はなかっ たでしょう。数字合わせはうまかったけれども。ということではないのでしょうか。

司会 お聞きしたいのですが、宮沢さんと塩崎さん、こういう人たちは、本当にさえた人間なのですか。つまり経済理論は、今80位になっても平気で現代について行けるような頭の構造を持っているのかという。個人的に当然接触しているでしょうから、ちょっと伺いたいということで。この人たち本当に切れる人なのかどうか、現実に話してみて、すごい経済理論というか、そういうことに裏打ちされた方々なのだろうかと。

岩崎 宮沢さんというのは、塩じいさんは知りませんよ、宮沢さんというのは、やはり 切れるのではないでしょうか。ただ、政治家としてではなくてね。やはり評論家、それか らジャーナリストとして、彼を、彼がもしそうであったならば、非常に切れるし、実にわ かりやすい解説をしますね。ただ残念ながら、彼は政治家なわけですね。政治家としての 、では仕事をしたのかということになれば、皆さん考えている通り、してないねというこ とになってしまうのですよね、残念ながら。彼が本当に政治的なリーダーシップを発揮し て、じゃあ旧来型のつまり自民党の中で、泥をかぶりながら泳ぎ回って、力を、つまり発 揮できるような人間であったならば、日本経済はもっと良くなっていたでしょう。それは もうバブル、バブルを作ったのだって、私は、やはり日銀にも責任はあるけれども、もう 事実改革に入っていたにもかかわらず、あそこで当時6兆円という非常に金額は少ないけ れども、今となってみればですよ、今の水準から見れば。あそこで当時の6兆円の補正を 組んだ、そこからですよ、バブルがまさに始まったのは。バブル崩壊後、彼は公的資金導 入をちらちらと言った。そこでおしまいなのです。政治家としての使命を果たすならば、 どんなに国民に嫌われても、公的資金を入れなければ、金融システムは破綻するというの がわかって、しかも、政治家ならばそれをやってほしかったなというふうに思います。

司会 それでは、いろいろ質問をしてしまってすいません。というのは、産経新聞の論 調を引っ張る方でして、編集局次長、それから論説副委員長ということで、ちょっと日本

の経済をどうして行くのだという形のことをかなり御存じでしょうから、そういうこともこりまして、ちょっと質問を。本当に岩崎さん、ありがとうございました。やはりすごい

こ思うのは、一回の視察で全部こうやって見抜いてしまうという、その構造力みたいなと ころはすごいなと。さすが新聞記者であるという。ありがとうございました。



この講演内容は印刷物としても発行されています。


イタリア研究会報告書No.95

2001年10月26日発行

企画編集 イタリア研究会

発  行 スパチオ研究所・伊藤哲郎

     (目黒区青葉台4-4-5渋谷スリーサムビル8F)

事 務 局 高橋真一郎

     (横浜市青葉区さつきが丘2-48)