第345回 イタリア研究会 2009-01-20
イタリアの幸せになるインテリア
報告者:インテリアデザイナー 戸倉 蓉子
司会 第345回のイタリア研究会例会を始めます。今日は、先日の新年会の時にもご案内申し上げましたが、運営委員長橋都先生が手術をされて、もう退院されて、今はすっかり回復されているのですが、自宅でご静養中でございます。私、運営委員の猪瀬ですが、代わりまして、今日司会を務めさせていただきます。
本日の講師は、建築デザイナーで、株式会社ドムスデザインの代表をなさっておられる戸倉蓉子さんです。戸倉さんの略歴、プロフィールを簡単にご紹介させていただきます。
戸倉さんは、慶應義塾大学の附属病院にナースとしてご勤務されている際に、人間は環境で生き方が変わるということを悟られて、インテリアの勉強を始められました。インテリアコーディネートの会社を興されて、1998年にミラノに建築デザインの分野ということでご留学をなさっております。ミラノでは世界的な建築家パオロ・ナーバ氏に師事して勉強された後、ご帰国なられて、一級建築士の資格をおとりになりました。
イタリアご滞在中に、数多くの町を訪ねられて、非常に個性あふれる建築空間と、人生を謳歌する人々に感銘を受けられたそうです。回廊を持った家とか、路地のあるマンションとか、元気になる病院などと、非常にユニークなライフスタイルを提案されております。2006年には、日本フリーランスインテリアコーディネーター協会の会長に就任されて、講演、執筆、雑誌取材と、活発にご活躍中です。
ご著書に、去年の12月22日に出版されました「いい家に抱かれなさい」、日経BPから出されております。本日、後ろのテーブルにお持ちいただいております。定価が税込み1575円のところ、1400円でおわけいただけるそうです。ぜひお帰りがけにご覧ください。
ライセンスは、一級建築士のほかに、イタリア政府認定のインテリアデザイナー、インテリアコーディネーターなどのライセンスをお持ちです。
それでは、戸倉さん、よろしくお願いします。
戸倉 皆様、こんばんは。只今ご紹介いただきましたドムスデザインの戸倉です。よろしくお願いします。今日は、イタリア研究会の皆様の前で、とても皆様イタリアにお詳しくいらっしゃいまして、私がお話するのもおこがましいのですが、今日ご縁をいただきまして、このような場をいただきまして、今まで私がやってきたこととか、イタリアとのかかわり、それから、私がイタリアをどう日本に紹介してるんだろうみたいなことをお話させていただければありがたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。
先ほど猪瀬さんからご紹介いただきましたけども、私少し経歴変わってまして、もともと建築を学生の時から目指していたわけではなくて、実は小学校の時にナイチンゲールの本を読んで、将来の夢は看護士さんと卒業文集に書いたのですね。小学校のその時の夢がそのまま、看護学校へ行って、ライセンス取って、私は福島県生まれなのですが、上京して勉強して、慶応義塾大学病院、ご存じですかね、信濃町にあるところで、就職しまして、小児科に配属されたのですね。
で、私はずっと夢を持ってまして、小学校の時から、看護婦になったら、みんなを幸せに、健康にしてあげられるんだみたいな、なんかヒーローみたいに自分を思ったのですね。
でも、実際病院に就職しますと、その夢は崩れますよね。というのは、なんて自分は無力なんだということばかり目の前で起こるのですね。本当にもう亡くなっていく命とか、苦しんでいる子供たちをどうやったら少し軽減できるんだろうみたいなことを悩んでいたのですが、ある時1人の女の子が、白血病だったのですが、全然表情が、笑顔がないのですね。私は担当だったときに、その子を何とか笑わせたいと思って、ベッドサイトにガーベラの花を1輪置いてあげたのですね。そうしたら、その女の子が、看護婦さん、ありがとうって初めて笑ってくれたのです。私はそのときに、あっこういうことかと思ったのですね。
医学は、人間の臓器とか、細胞レベルのことはよくしてくれますよね。でも、本当に人間がよくなるというのは、私は心とか、明日への希望だったりとか、心の持ちようというのがすごく大事なんだと思ったのですね。
そうしたら、今皆さんがいらっしゃるこういう空間って、どうですかね、毎日毎日そこの場にいたら、例えば、とても病院の環境なんかのグレーで、わかりますか、お見舞いに行ったら、なんか自分も病人になっちゃったみたいな経験ないですか。本当は1番元気にならなければいけない環境なのに、何で行っただけで元気がなくなる環境に私たちは治りに行くんだろうというのがすごく疑問だったのですね。
だったら、やはりそこの環境というのをもっともっと考えて行ったら、もしかしたら、1ナースとしてはできなくても、なんか環境でそういう心を元気にすることができて、それで病気になりにくいとか、なっても、早くよくなるとか、あるいは、長生きできるとか、そういうようなことが私はできたらいいなと思って、それで、インテリアの勉強を始めましたら、いつのまに建築デザイナーになってたのですね。
そんな経緯がありまして、独立しまして、98年に、私は今から10年くらい前に本格的にイタリアと出会ったのですね。ですから、皆様から見ると、すごくまだまだ浅い新参者だと思うのです。
でも、私はなぜイタリアだったのだろうと思うのですね。アメリカにも行きました。フランスにも行きました。イギリスにも行きました。でも、イタリアに導かれるように行ってしまったのです。
それというのは多分私が、1つはデザイン大国イタリアというのはもうデザインをやる人だったらあこがれの国というのはありますけれど、1つは、フランスはとても美しいのですね、街並みが。でも、美しいのだけど、イタリアというのはまたちょっと違いますね。その美しい街並みに、人間が人生を謳歌しているというのですかね。とても町に人がはみ出てて、なんかこういうことって許されるのかなと、例えばスペイン階段に座っちゃったりとか、ああいう町の中に人が一緒の風景になっているというのが、そこがすごく、生命的なこととか感じられて、私は導かれるようにイタリアに行ったのです。
それがきっかけで、とても自分の、ナースだったときに、何とか人を環境で幸せにできないかということの解答は、実はイタリアにたくさんあったのですね。それがすごく今の私を作ってくれているなと思ってまして、ただ皆様、いろいろな切り口でイタリアを見てらっしゃると思うのですが、私はインテリアと建築、それから、街並みみたいなものを通して、イタリアと関わっていきたいと思っているのですね。
ちょっとこれから90分弱なのですが、お付き合いいただきたいと思います。
皆様、本当にイタリアの詳しい知識とか、たくさんお有りなので、逆に私が今日お話すること以上に知識を持ってらしたりとか、アイデアいただけたらとてもうれしいなと思いますので、終わってからでも忌憚のないご意見とかいただけたら嬉しいと思います。
最初に、私の仕事、どんな仕事をしているのかというのを10分くらいのDVDで、最初少しイタリアも登場しますので、イタリアに行った気分になりながら見ていただけたら嬉しいなと思います。では、切り替えます。
(DVD)
今見てきたものはみんな日本の建物です。私は、多分数少ないと思いますが、自分でプランニングをしまして、自分でイタリアに石とか、家具とか、買いに行って、持ってきて、作ります。プランニングから資材調達まで、結構イタリア北から南まで、日本のように東京だけですまないのですよね。大理石は北へ行ったり、窓は南へ行ったり、もう1日の移動距離が200キロ、300キロなんていうこともあります。それだけ思いを込めて作っているものなのですが、いかがだったでしょうか。
さて、これからは少し切り替えまして、今日は「イタリアの幸せになるインテリア」というお題をいただいているのですが、皆さん、幸せになりたいですか。ありがとうございます、賛同していただいて。
今、日本どうですかね。皆さん、お仕事。1日1回は聞きませんか。100年に1回の不況と。もう慣れてしまいましたよね、その言葉。でも、私、イタリアに友達も、皆様もそうだと思うのですが、いても、彼らのほうがもっと本当は悪くないですか、経済状態。失業率も高いし。ミラノにいる友人、アレクサンドラ、今日本に来ているのですが、彼女のお友達なんかは、職がない、正社員雇用がないと言いますよね。ミラノなのですが。放送作家、ミラノのテレビ局の放送作家をやっている人なのですが、やはり正社員を切られてしまって、パートタイムというのですかね、そういういつでも切れるような状態での契約にされているのが、結構彼女の友達、周りの人ほとんどだというのですね。
建築家は、仕事をしてもお金がもらえないと。私イタリアでそんなことだとすごく大変だと思うのですが、完成しても、6か月後にしてくれとか、1年後にしてくれとか、クライアントさんが言うらしいのですね。その間にいろいろなクレームをつけるらしいのです。あっちが悪い、こっちが悪いと。そして、値切って、結局労働力に見合うお金がもらえないというふうな状況で、建築家、みんなアルバイトしてますよね。
それから、私も一緒に暮らしていた時に、弁護士さんの方が、職を探し、毎日毎日電話帳で職を探しているという状況で、とても大変だと思うのですが、でも、なぜかイタリアに行くと、豊かさを感じるのですね。
それというのは、たぶん日本の価値観と全く違うのではないかなというのに感じるのですが、私たちは今までは、やはり戦後どんどん家を作るということで、家を買うのを目標できましたよね。ローンを組んで、例えば、買って、ちょっと郊外で、でも、果たしてそれが幸せだったのかと思うのですね。通勤の時間大変で、ローンのために節約して、お金を払ってみたいな、でも、お給料が上がると思って買ったのに、上がるどころか下がるという状況じゃないですか。
多分これからの日本、やはりイタリアってある意味お手本だと思うのですね。われわれはもうこういう経済成長は終わって、もうゆっくりの、ある意味落ち着いた状態になって行くのだろうなと思った時に、イタリアの暮らし方って、すごくヒントになると思うのですね。
なぜならば、まず休暇が長いですね。1か月丸々夏休みをとってしまって、でも、それって実は人生の中で、本当はすごく大事な充電時間だと思うのですね。日本も今まで働いてきて、一生懸命残業してきたけども、気が付いたらお給料上がらないし、何か下がってるじゃないというふうなことになると、やはり、休暇とか、すごく大事になってくると思うのですね。
それともう一方、家にいる時間って長くなりませんか。残業減りますよね。そして、例えば、今までは接待ゴルフだの、お父さんが土日いないという状況だったのだけど、そういう機会は減って、家族と暮らす時間というのが絶対増えていくと思うのですね。その時にイタリアって、家族と暮らす時間がものすごく長いと思うのですが、そのインテリアも、私はインテリアの仕事もしているのですが、やはり彼らの家の中って、すごくきれいにしているし、毎日些細なことを楽しんでいますよね。
日本もそういう時代になって行くのだと思うのですね。日々の小さいことを、もう5000万の家を買おうという価値観から、1日1日の暮らしをどう豊かに、楽しく、充実して生きていけるかということだと思うのです。だから、家具だったりとか、ファブリックだったりとか、間取りだったりとか、どう心地よく過ごすかと、これからもっともっと大事になってくると思うのですね。
だから、そんなことを思いながら、こちらの、今日写真を、イタリアのインテリアも皆さんにお見せしたくて、100枚くらい持ってきたので、お話をしながら、写真を見ていただきながら、進めていきたいと思います。
ポイントポイントで、インテリアの、私はインテリア大好きなので、皆さん、イタリア人のインテリアって結構見てらっしゃいますかね。暮らしてらっしゃる方もいらっしゃいますものね。あまり見たことないという方いらっしゃいますか。イタリアは行ったけど、一般の方の家の中ってどうなっているのだろうと素朴に思う方どのくらいいらっしゃいますか。ありがとうございます。4分の1くらい。じゃあ助かります。皆さん知っていたらどうしようと思ったのですけど。
それでは、レジュメのほうにも、イタリアの幸せになるインテリア8つの法則と書いたのですが、これはあくまでも私が見てて、こういうことがあるなと整理してみたものなのですね。この8つの法則、私が発見した、なぜイタリア人の家の中は豊かに感じるのかみたいなことですね。それを8つの法則として、お話していきたいと思います。
まず1番目、幸せの法則その1としたのですが、玄関はムーディーにというキーワード。どうですか、イメージつきますでしょうか。写真見えますかね。ちょっと懐かしいイタリアの内開きの玄関かもしれませんね。これって鍵をガチャンガチャンと建てつけの悪い鍵を開けて入りますと、これローマのある方のお家なのですが、これが玄関のドアで、外が廊下で、そうしますと、イタリアの家の特徴的なものというのは、玄関、ちょっとでも玄関ホールみたいなのがありますよね。ここで多くの方は、あちらにいる日本人の方なんか、靴のままではなくて、やはりそこで上履きに履き替えたりすると思うのですけども、私はこれをバッチポイントと呼んでいるのですね。チュッチュとキスしますよね、イタリア人。帰って来たらチュッチュ、出かける時もチュッチュですよね。皆さん大丈夫ですか、ついてきてくださいね。それで、なぜそれが自然にできるかというと、ちゃんとこういうところがあるからなのですよね。
私は日本の今の家族が希薄になっているのは、マンションの作り方にとても問題があったのではないかなと思うのですね。皆さん、マンションにお住いの方いらっしゃいますか。玄関開けて、1平米くらいの靴脱ぎ場がありますよね。そこから、その同じ幅で廊下がつながっていきませんか。真ん中に廊下で、左右に部屋があって、リビングに突き当たるみたいな。
そこで、お父さんが行ってくるよと言った時に、本当は家族全員が、昔の日本は、いってらっしゃいと送ったと思うのですね。帰ってきたら、お帰りなさいとみんなで、奥さんと子供が出迎えてくれたと思うのです。でも、あの玄関でどうやって出迎えますかね。みんな縦に1列に並んで、お母さんの次子供というふうに、長女、長男となっちゃいますよね。だから、必然的にも行くのやめちゃったのですよね。お父さんが帰ってきても、迎えに行かないし、出ていくときに、行ってらっしゃいも言わなくなっちゃった。
こういうののインテリアって一口に言いますけども、人間の行動を変えてしまうのですね。だから、とても重要なことだと思うのですが、イタリアのバッチポイントを見てみると、本当に飾ってありますね。こんなふうに玄関開けると、右側に椅子と絵が飾ってあって、ちょっと左側に、この下に、コンソールというちょっと小さめの引き出しのついたタンスみたいなのがあって、その上に必ずこんな鏡が、大げさな鏡があったり、お花が飾ってあったりしますよね。どうですか、エレガントな気持ちになりますよね。で、迎えられた方も、お帰りなさいと、優雅なところで抱き着くシーンというのは絵になると思うのですね。これ無味乾燥だったら、抱き着きたくなくなりますよね。
この花、すごくいいなと思うのです。これは、実はローマの平田画伯のお家なのですが、奥様、こんなようにきれいですね、飾っているのですね。
これは別のパオロ・ナーバの秘書のマリアさんの家なのですが、この彼女の家は、もうここ玄関入ると、すぐダイニングなのですね。玄関ホールはないのですが、でもこれもとてもなんかいいなと思って、家を入るとすぐみんな家族の顔が見れますよね。
ちょっと特徴的なのは、ここにちょんちょんちょんちょんと見えますかね。ライト。イタリアの家って、玄関明るくないですね、決して。日本はどうですか。蛍光灯が上からばーっと落ちてきて、なんか青白い顔で、奥さんがお帰りなんて出ると、ちょっと旦那さん、ひいちゃうみたいになりませんかね。
この光がすごくイタリア、グッドなのですね。暗い、お客様の顔も、ほんのりピンクに見えて、蛍光灯ではない、ちゃんと白熱灯とか、あるいはキャンドルとか、そういうので出迎えると、すごくムーディな感じでいいですよね。
なので、私は玄関のポイントというのは、いつも気にかけてあげて、やはり玄関はドラマティックで、ムーディな玄関でということで、これは個人邸なのですが、日本で作った、こんなふうに、必ずゆるやかに、玄関はこせこせしないで、ゆるやかに、ちゃんといってらっしゃい、お帰りなさいというふうにできるような環境にしてあげるということ。
それから、上り框も、日本の場合、靴を脱ぐので、どうしても上り框がないと、どこまでも靴で行っちゃうのですよね。
ところが、ちょっとこれは、広島でデザインに監修したマンションなのですが、マンションでも段差をなくしまして、どうしても1平米の靴脱ぎがいやなのですよね。なぜここまでで脱がなきゃいけないのみたいに決められるのが。で、ちょっと広くしてあげて、でも、ちょっとこういう、こっちが土足で来て、こっちが靴を脱ぐエリアなのですが、1本ちょっと入ってたりとか、後、色が変わっているだけで、日本人の方は靴を脱いでくれるのですね。なので、ちゃんと中の上履きの生活がしたいというときには、こんなふうにしてあげると。でも、それだけでも、1平米から解放されて、少し緩やかな関係性が持てる玄関というのが作れるのですね。
これは、イタリアからアイデアをもらって、土間にしてみたのですが、実際入居してしまったので、今写真はないのですが、こんなふうに外の回廊から玄関を、もう緩やかにつないでしまうというのですかね。家に入って、玄関なんだけど、ドア入ったらもう部屋だみたいな感じで、ここまで土足で入れるようにしてあげて、家族が何人でも迎えられるように。
こうすることによって、とても日本の生活というのは、規則から解放されると思うのですね。実際いろいろな使い方をしていただいていて、こんなことはすごくイタリアでも、イタリアの生活なのですが、実は日本で昔あった土間というスタイルですね。それが本当に共通するところがあるんじゃないかな、日本人はとてもいいんじゃないかなと思っております。
幸せの法則、8つありますので、早々に行きますね。キッチンはマンマの城としたのですが、これクッチーネが、イタリアのキッチンどうですかね。皆さんもイタリアで生活されたとき、キッチンは大きかったですか。今大きいところもあるかもしれませんが、私留学しているときに、たくさんのキッチンを見せてもらったのですが、やはりイタリアは壁構造、壁の量で建物を支えるので、実は結構家の中に取れない壁というのが多いのですね。キッチンもそんなに大きくなかったですね。私が拝見したお宅は、結構日本と同じくらいのスケールだったのですが、でも、日本よりもずっといいなと思っていたのですね、キッチン。
これは、ミラノサローネも、ちょっと欲張りなので、いろいろお見せしようと思って、ミラノサローネもお持ちしたのですが、今のこれ、ミラノサローネのキッチンの主流は、わりとぼんと箱型が大きくて、何でも入れてしまう、すっきりしてますね。後ろの方に扉なのですが、まるでクローゼットでした。今から2年前に行ったときに。どこが扉で、どこが引き出しかもわからないような、壁と一体型の傾向がありますね。これなんかも白の感じで、ずっと壁に見えるのですが、実は扉を開けると、引き出しだったりとか、いろいろ全部収納できるようになっている。
でも、本当にこういう生活をされているという方は一握りだと思うのですよね、イタリアでも。ある意味モーダ、ファッション性とか、流行の先端を行ってるミラノサローネなので、こういうデモンストレーションをしているのですけども、イタリアのデザインの1つのすごさというのは、徹底してますよね。
日本だと、そのプランいいけど、でも使い勝手はどうなのとか、やはりだんだん曲がって行っちゃうと思うのですね。プロダクトができていく過程で。でも、イタリアのこの何かとても潔くデザインといってるのは、とても格好いいものができてくるなという土壌を感じます。
これはミラノサローネの傾向だったのですが、一般家庭に話を戻しますと、これ平面図、小さいのでわかりにくいと思うのですが、イタリアの平均的なマンションの都市部ですね、郊外ではなくて。大体私がいろいろ見させていただきますと、120平米くらいだったのですね。日本のファミリーだと60平米とか、65だと思うのですが、2倍くらいでしょうかね。
特徴的なのは、玄関入って、入りますとすぐグアルラローバという、靴とか、天井まで靴置き場とか、そういう倉庫みたいな部屋がありまして、ここにサロットというか、スジョルノですね。こういうリビングと、大きなダイニングテーブル、どーんとした部屋が必ずあって、バルコニーに面していて、子供の部屋みたいに、小さいですね、子供用なんかわりと。小さいのがあって、主寝室があるみたいな感じ。
特徴的なのが、キッチンなのですが、何か必ずバルコニーと窓があるのですね。日本の場合、キッチンに窓があるというのは少ないと思うのですが、この窓、それからバルコニー、この関係性がとても豊かなキッチンを作ってくれてますね。
例えば、写真にすると、こんな感じなのですが、こういうタイプはすごく多かったです。I型キッチンといって、片面だけキッチンになっていて、ちょっとしたこういうイスとテーブルが必ずあるのですね。その先にバルコニーと窓がある。
なぜならば、イタリア人の朝食って、こんなふうに軽いじゃないですか。ビスケットとエスプレッソで終わりみたいな感じなので、小さいテーブルで朝は済んでしまうのですね。その代り週末になると、大きなテーブルのほうに移動するのですが、この友人のマリアさんのキッチンもI型で、こっちの一辺が3.5メートルくらいで、短いほうが2.5メートルくらいで、そんなに大きくはないのですが、でも、とてもイタリア人のキッチンの考え方というのは素晴らしいなと思ったのは、家具なのですね。
日本だと、キッチンの設備機器扱い、設備屋さんの担当なのですが、向こうはこれを家具と見て、ものすごくお金、日本の3倍くらいお金をかけると思うのですが、キッチンに対して1番お金をかけてますよね、家の中で。なので、この吊り戸、1食のあとに、下を拭いて、それから吊り戸も拭いてみたいな、すごいなと思うくらいピカピカにしてるのですが、こんなふうに、日本の場合、上と下が同じ同材のキッチンで、あまりバリエーションもないのですが、色もカラフルですし、こんなふうに下を黄色にして、カーテンをこの黄色を持ってきて、食器も黄色で見たいな、こういうキッチンの中のコーディネーションが、本当にマンマ、主婦の方の腕の見せ所でもあるし、とてもここが城というふうな感じですね。
どうでしょう。食器も、やはりイタリアの食器というのは、すごくデザインされてるものができていますよね。日本のように、今100円ショップもあるのでしょうけども、あまり簡単に買わないなというのが、本当に率直なところで、ちゃんとこのキッチンだからこの色のおたまとか、鍋とか、探し回って、手に入れるくらい。日本だったらすぐそこに行って、買ってきちゃいそうなものを、とても時間をかけて探すというふうな、そういうのが、作る方もそうですが、買う方も真剣、そして、それをちゃんと子供たちに、このデザインはこうだからこの色なのというのを教えてあげますよね。だから、子供の時からそういう感性というのは、お母さんからと、家庭で磨かれることがすごくあると思うのですね。なぜならば、この色はこれと合わせてるからこうで、ちゃんと説明してあげるというのがすごいなと思うのですが、私たちはどうでしょう、イタリアの食器、モダンも、クラシカルもあると思うのですが、これはアレッシーとグッチーニ、ご存知ですか、最近日本に入ってきて、実はこれはわがドムスデザインのオフィスなのですが、グッチーニの食器を、お茶を出してあげるのですね、お客様に。何が起こるかと言いますと、これまずかわいいねというふうなことで、見たことないって。お客様が、これ飲んでいいの、飲んでいいのみたいな、ずっと待っているのですね。そういうのが引き付ける魅力ってありますね、イタリアの食器って。
実はこれ、ドムスデザインみんな女性なので、女性が喜ぶようにハートにしてみようと思ったのです。実は、男性が喜んでいる。営業マンの方のですが、これいいですね、いいですねと言って、ハートの柄を持って、喜んでいる。なんかそんなふうにおしゃれなものって、すごく小さいものでもいい気分にしてくれますよね。イタリアというのはそういうものがすごく多いなと思うのですね。
こういうアイデアで、土間キッチン、キッチンを土間にして、ここで土足で食べられるというのをいくつか作っているのですね。
何がいいかと言いますと、小麦粉とか、お母さんと子どもがお料理をしても、フローリングだと、お母さんが、こぼしてはダメと、お料理しながら怒りますよね、きっと。でも、これこぼしてもへっちゃらなので、タイルなので、お母さんと子どもがものすごくおおらかに一緒にお料理ができたりするのですね。
こういうのというのは、やはり、本当はお料理って家族で楽しんだりするものなのに、こぼしちゃいけませんが先になっちゃうと、本末転倒になっちゃって、その子はやはりずっとお料理が好きじゃなくなってしまうんだろうなと思うのですが、こんなふうに、どんどん汚して、お料理してみたいな環境を作ってあげると、本当によろこんで、家族が自然と集まってくる場所が生まれるなと思います。
3番目に、リビングは自己表現の場所なのですが、これは先ほどちょっとキッチンでお見せしたトラバリアート、トラバリアート行ったことのある方いらっしゃいますか。あまりいないですよね。ここに訪ねまして、とても素敵な暮らし方をしていたので、日本人の方なのですが、開けるとやはりすぐダイニングが出てくるのですが、このように地元のスプマンテ、フランチャ・コルタというのを出してくれて、大阪の方なのですが、向こうにお嫁に行って、イタリア人と結婚されたのですが、この壁の黄色とか、自分たちで塗ったと言ってましたね。大理石の粉に色を混ぜて。
旦那様、ダリオさんというのですが、この方は工事をやったりしてらっしゃるので、明るいのですが、夫婦で作っていくって、すごくいいですよね。奥さんはこんなビーズの刺繍なんかをしてたりするのですが、今度はあそこをやろうとか、今度はここをやろうとか、夫婦で、お話してるのですよね。そのように自分たちで作る家というのは、本当に一緒に生きていくという感じがして、いいなと思うのですね。
あるいは、このローマのリビングですが、これは、先ほどのトラバリアートは田舎のほうなので、田舎の感じがするかと思うのですが、こちらは先ほどの平田さんの家なのですが、よくやりますよね、食事会って多いですよね。私も呼ばれて行ったのですが、その時にとても素敵にテーブルセッティングをしてくださって、このブルーのテーブルクロスだったりとかするのですが、こんなふうにですね。みんなが家の中、どうぞご自由にという感じで、ここのリビングは、18世紀の家具、ベネチアの家具を使いまして、壁はグレー、なぜこの色にしてらっしゃるかというと、ご主人が画家さんなので、とても色が、色彩が豊かな、赤とか、ブルーとか、濃い色を使ってらっしゃるので、壁は背景になっています。こんなふうにテーブルがあったり、シルバーの食器ですね。で、こんなふうに入って、これはジノリのお皿、だーっとすごく古いものもあるのですが、こういうのもちゃんと飾って、しかも、飾るだけではなくて、ちゃんと使って、お客様におもてなしするという。これも本当に豊かですよね。
やはり家の中は暗いです。要所要所にライトがあって、ライトのところに花があるとか。とても場を作っていますね。こんなふうにブルーのテーブルクロスとか、このお宅もバルコニーでつながっていて、食事をしたら今度、寒くないときはバルコニーのほうに移動して、そこでグラッパをいただくとかですね。そんなふうな、家全体を楽しんでらっしゃるという感じがいたしました。
平田画伯なのですが、お気に入りの場所なのですね。皆さんはご自分の家で、自分の後ろの背景って気にされてますでしょうか。これ結構、後ろに目がないので見えないのですけども、こんなふうにお客様がいると、画像として見ているのですよね。自分だけじゃなく、その後ろに何があるか。それがとても、例えば、その方にあっている色だったら、全体が素敵に見えるのですが、あわない色になっちゃうと、くすんで見えちゃったりとか、年齢より上に見えてしまったりするのですね。
で、こんなふうに、この方とてもよく自分のポイントってわかってらっしゃるし、ブルーの色で、絵がとても似合うのですが、そういうご自分のインテリア、このみではなくて、どういうものが実際似合うのかなんていうのを意識されるというのもすごく大事な事なんだなと思います。
こちらは、マリアさんの家なのですが、びっくりするのは、こういう絵が彼女が描いた絵なのですね。こんなふうに絵をかけて、本当にプロさながらの絵なのですが。
こういうふうにして、彼女は仕事をしていました、ずっと昼間も仕事で外に出ているのですが、そうすると、息子さんが帰ってきて、1人でおやつを食べたりするのですが、必ずこういうところにお母さんの描いた絵があるというと、存在感があるのですね。それで、お母さんと一緒にご飯食べている、さびしくないという感じで育ったとおっしゃってましたね。こういうのはとても、やはり個性的な暮らし方だと思います。
こちらは、ミラノの友人のアレクサンドラの家なのですが、お客様をもてなすだけではなくて、その家の歴史というのを、とてもインテリアで表現されていらっしゃいます。例えば、このテーブルのところにかかっているのは帯なのですね。日本の着物の帯。私が行くので、おもてなしとして帯をかけてくれたのですが、例えば、このお皿も全部思い出のものだったりとか、こんなふうに絵をかけているのですが、とても絵をたくさんかけますよね。
日本の住宅の中って、なんて殺風景だろうと思いますけど、絵を何枚も何枚もかけて、しかもそれが全部ストーリーがありますね。この絵は子供が入学したときに描いてもらったとか、この絵は新婚旅行の時に買ったとか、それを全部かけて、その家の歴史を展示するかのように、暮らしを楽しんでいる。
ばらばらにならないのがとても上手だなと思うのですが、こんなにたくさん絵をかけたらばらばらになりますよね、結構。どうやってかけたらいいんだろうなんて。
でも、こうやって見ていると、ポイントは、なんかこうやって必ず大きな水平ラインと、垂直ラインを合わせてますね。その中でおさめていくと、こうやってかけると、たくさんかけてもバラバラにならないんだというのが、こういうところから教えられますね。
この古い家具と一緒に生活をするというのが、とても素敵だなと思うのですね。代が代わっても、例えば、この大きなチェストはおばあさんからのチェストで、でも、そこに私がこのガラスの花瓶をトッピングしたのというふうに、昔の先祖代々の家具を大事にしながら、ご自分で好きなものをそこに入れて行って、一緒に生きていく。とてもそういうのがいいなと思うのですね。
こんなふうに、行くとちゃんと正装して、きれいに着飾って、もてなしてくれるのですね。
幸せの法則4番目、夢はご一緒に。これは何のことかと申しますと、だいたいわかりますかね。ここに、日本45対イタリア106という数字があるのですが、これなんだと思いますか。これは実は夫婦のセックスの回数なのですね。これは、私もともとナースということもあって、セックスの、人間の生態学とか結構研究しているのですけども、だから、変に思わないでくださいね。
それで、これは2005年にある会社が調査した、世界を調査したのですね。どうやって調査したのか不思議なのですが、実は1年間に夫婦がメイクラブする数が、1番多い国はどこだと思いますか。ギリシャなのですね。私は、イタリアは結構1位、2位かなと思ったのですが、実はイタリアはこの辺なのですね。ギリシャが138くらいなので、イタリア106なので、そこそこなのですが、何がびっくりするかというと、日本ですよ。これですね。世界最下位なのですね。これというのは、何か疲れちゃってるのかなと思うのですけども。
私実際、今までリフォームとか、新築物件で、多くの方の寝室のプランどうしますかというのをやってきたのですね。100組くらいやっていると思います。ダブルベッドにしてくださいという人が1人だけ、1組だけだったのです。その人は、ダブル、キングにしてくださいとおっしゃったのですが、後の方は、99人は別々ですね、ベッドが。中には別室がいいと言われる方もいらっしゃるので、それはそうなのかなと思ってそうするのですが、なんかその辺にちょっと原因があるのかなと思うのですよね。
つまり、機能が、イタリアで私は建築の勉強をした時に、寝室のプランで、ツインベッド書いたのです。そうしたら先生に、日本は分かれて寝るのかと、建築の先生がおっしゃったのですね。それで、えっと思ったのですけど、そういうこと突っ込まれると思わなかったので、そうしたら、イタリアはもうダブルだよと先生おっしゃったので、そうなんだなと思ったのですけど。
そういうことがありまして、ベッドの形って、実は大事なのではないかなとすごく思って、いろいろ私の中で研究しているのですが、やはり夫婦円満がいいに決まっているのですが。
これはミラノサローネで、まん丸いベッドがありまして、これは動かないのですが、まん丸いのもイタリア人発想してまして、何がすごいなと思ったのは、ベッドが丸いのは思いつくと思うのですが、家具まで丸くして、どんどんどんどん出てくるのですね、引き出しが。そんなふうに全部丸くしようとするところが、中途半端ではないデザインのマインドというのを感じるのですね。
ベッドも楽しいベッドがたくさんありますよね。例えば、これ場の雰囲気のテイストのベッドなのですが、こんなふうに茶色と鮮やかなピンクの組み合わせとかですね。それから、これもかわいいなと思ったのですけど、ベッドヘッドに、こっちがYOU、こっちがMEと書いてあるのですね。寝るところがYOU & MEと、決まっているからチェンジしたらだめよみたいな感じなのですけども。
それから、これは先ほどのトラバリアートのお家なのですが、これもかわいいですよね。なんか斜めの天井のところに赤いベッドのスプレッドがついてまして、こんなふうに中国の家具なんかと組み合わせているのですね。
ちょっとこのインテリアは、ローマのとても貴族のお家なので、お宅にお訪ねする機会があったので行ったのですが、こういうふうに、ここで感動したのは、ここに窓があるのですね。ここに窓があるのですが、ここの絵が、そのまま今から200年前の風景だとおっしゃるのですね。そんなふうに、この貴族の館の方は、寝室をまるで全部楽しんでいたのだなと思いましたね。とても夢がありますよね。
これも友人のアレクサンドラの家のベッドなのですが、結構OKなのですよね、寝室に入るの。だめでしたか。どうぞどうぞと全部見せてくれる。本当にきれいにしてらして、逆に、ここ駄目と言われたことないのですよ。
日本はそんなことありえないだろうなと思うのですが、結局、こうやってイタリア人というのは、人が来るからきれいにするのではないですよね。自分が今日どう気持ちよくいきたいかというのが根底にあって、だから、インテリアをきれいにして楽しもうとか、ちょっとカーテンを変えてみようとか、毎日毎日の楽しさのために、インテリアを楽しんでいると思うのですね。
アメリカなんかは、逆に家の資産を、どうやって高く売れるかというために手入れをしたりすると思うのですが、イタリア人の場合は、より本当に自分を楽しむためにインテリアを楽しんでいるのだなと思うのですね。
ここでの大事なことを1つ発見しまして、男性が寝る位置と、女性が寝る位置なのですが、男性は右側に寝ていただいた方がハッピーです。わかりますかね。女性が左で、男子絵が右。これは逆の夫婦がいたら、別れる危険が、別れるパーセンテージが多いというデータがちゃんと出ているのですが、ここのアレクサンドラの家も、お父さんとお母さんがちゃんと住みわけてまして、お互いに自分の本を持っているのですよね。寝る前に自分の本を読みながら寝て、朝は何をしているかというと、ベッドの上でコーヒーを飲んでました。エスプレッソ。そして、旦那さんが奥様にずっとお話をしているのですね。そういうシーンというのはすごくいいなと思ったのですけど、多分寝ながらもコミュニケーションなのですよね。それが、本当にお話だったり、今日の出来事だったり、昨日の出来事だったり、多分些細なことだと思うのですが、そんなふうにして、コミュニケーションを取れる場所だったら、寝室というのはいろいろな可能性があると思うのですね。
これは、例えばそうやって発想して、日本のある分譲住宅で、日本だとベッドを置いて終わりという感じじゃないですか。でもそれだけじゃなくて、例えば、ご主人が休まれていても、奥さんが脇でちょっとパソコンをいじったりできるようなスペースを作ってみたのですが、こんなふうに、これから寝室というのが結構大事になるのではないかなと思うのですね。日本ももっともっと夫婦が仲良くなって、そうしたら子供もうれしいし、家族がもっと円満になるんじゃないかなと思うのですね。
幸せの法則5番目ですが、我が家だけのバスルーム。
これはミラノサローネです。日本ブームなのですね、やはり。それで、結構日本のお風呂みたいなのが出てきてましてね。こんなふうにイタリアの斬新なグリーンの手前に、檜風呂みたいなのがあったりですね。これちゃんと中見ると、座れるようになっているから、こういうところすごいですね。考えてるなと思うのですね。
後、あるいはこういう。これもここにくりぬいてバスタブが2つあるのですが、日本の檜を意識していますね。これも本当日本ブーム。あるいは、このお風呂の脇に提灯と、お香があったりします。
一般のイタリアのバスルームは、これはちょっと古いですよね。実は私が暮らしたアパートなのですが、バスタブだけあって、シャワーカーテンがないのですね。どうやって入るんですかね。私は1度としてうまく入れたことがなくて、だってそうですよね。ここでバシャバシャやってたら、全部はねて、髪の毛なんか洗っていると、ある時はトイレットペーパーまでぐしゃぐしゃになってしまったのですが、本当にどなたかに、どうやって入るのかこつを聞きたいと思ってたのですが、いつもですから、ちょっとしゃがんで、少し低姿勢で髪とか洗ってたのですけどね。本当に不思議ですよね。
中にはこうやってシャワーのカーテンがあるところもありますよね。
でも本当に、イタリアのバスルームというのは個性的、タイルとか必ず1つとして同じ絵がないのです。日本はどうかというと、ユニットバスがかなり普及していて、あれもとても日本の生活を貧しくした原因の1つだと思うのですが、隣の家と全部同じお風呂で、本当はあり得ないですよね。もっとお風呂の入り方って自由であってもいいと思いますし、これもトラバリアートのお風呂なのですが、このようにタイルがあって、天井が斜めになっていて、お風呂にも必ずイタリアには窓があります。トイレとお風呂が一緒なので、トイレには窓をつけなさいという法律があるのですよね。なので、必然的にこういうふうになって行くと思うのですが、でも実は、窓のちょい開きがとても豊かなことをもたらしていて、これはお風呂の脇に小さい窓があるのですが、こんなふうに花を飾ったりしてるのですね。そうしたら、何がその外にあるんだろうと覗きたくなるのですが、私も覗いたのですが、隣の屋根が見えたりして、かわいいと思いませんか、この煙突の屋根が見えて。鳥がちゅんちゅんちゅんと来るのですね。こんなふうな気持ちでバスルームに入れたら、すごく幸せなんだなと思うのですね。
私もなるべく同じユニットバスではなくて、こういうタイルを使って、これはモデナのタイルを取り寄せまして作ったりしているのですが、後、こういう洗面台にも、シチリアのほうから取り寄せて作ったりしています。これだけでも、クライアントさん、とてもうれしいわと、隣の家と違ってうれしいわとおっしゃってくださるのですけども。
6番目、外とつながるテラスなのですね。どうでしょう。これ先ほどのローマのすごい貴族のお家なのですが、ドミニチ家とおっしゃるのですが、お母様が1人、九十何歳でお住まいなのですね。お嬢さん時々来るのですが。こんなふうに家のリビングのところから、チョンチョンチョンと5段くらい階段がありまして、これをあがるとテラスにつながっているのですが、こういうテラスってすごくイタリア多いですよね。
このテラスから、四季折々にいろいろな花が咲いているのですが、この内と外が自然とつながっているというのは、すごくイタリアの家の特徴だと思うのですね。
あるいは、こういうちょっとしたスペースでも、イスとテーブルを置いて、バルコニーにして、ここでお茶を楽しんだりとか、これはローマです。
田舎のほうに行きますと、上から見ると、バルコニーがチョンチョンチョンとあるのが見えますよね。みんなテラコッタというこういう赤い土でできたタイルがはってあって、このむのですね。
こちらもそうです。これはアッシジですね。
それから、これはオルビエートの生活なのですが、テラス、中と外がつながるのが本当に生活に密着しているなと感じた例なのですね。とても大きなテラスが外に向かって開いていて、一角にバーベキューの炉があるのですね。ここに生活されてるのは日本人の方なのですが、日曜日に訪ねていきましたら、後程、バーベキュー、鳥焼いているから食べていきなさいとおっしゃってくださって、多分そういうことはとても日常の中で行われていることだと思うのですけども、子供がちょろちょろしてまして、こんなふうに手を出したり、危ないと怒られたりしてるのですが、実はこういうふうな中で、子供が学ぶものって、とてもたくさんあると思うのです。
ちょっと見にくいのですが、ポルチーニ茸とか、近所からもらってきて、ちょうど私がいたときに、お隣さんが持ってきてくれたわなんて奥さんが焼いてくれたりしたのですが、こんなふうに家族でみんなで、そこのテラスで食事を楽しみながら作って、自分たちで食べる。まさにスローフードを体験したのですけどね。
日本というのは、割とこういう機会がなくなってしまって、子供たちの生活を学ぶ場所というのが、家の中になくなってしまったのではないかなと思うのですよね。
これもお父さんに怒られながら、子供がじゃあ少し薪を入れさせてもらったりとか、そんなふうに少しずつ生活を学んで行って、同時に心も養われるような場所であるというふうに思うのですが。
そんなのを体験しまして、私もテラスはいつもこうやって作っているのですけれども。お客様もこういうところにたたずむと、雨の日でも庭に出て、半分庭に出て、空気を楽しんだりとか、木々の彩りを楽しんだりできるのですよね。
どうも日本は、外と中が閉ざされているという空間が多いと思うのですが、これから結構こういう、今敷地が狭いですからね。うまく庭と家の中をつないであげると、またちょっと新しい生活ができるのではないかなと思っております。
7番目、帰るのが楽しくなるアプローチですが、イタリアのアプローチというのは、とてもちらみせの文化と私は思っているのですが、外から中が見えるけど、行けないというものもってないですか。
でも、実はそこにとても何か素敵なことが起こっていて、1つはこういう門扉ですよね。私はイタリアに行くたびに写真をたくさん撮ってくるのですが、こんな門扉の先に中庭があるということで、美しい門扉。
これもマンションの外から中に入っていく導線なのですけれども、こんなふうにトンネルのようなのがあって、その先に中庭が見えるのですね。こんなふうに門扉が見えて、どんどん素敵だなと思うと、これが入り口なのですが、どうでしょうか、本当に外から中への引き込み方がうまいなと思うのですね。わざと曲げたりとか。これも本当奥に何があるのだろうと期待させる入口なのですが、あるいは、こういう小さい路地で、本当になんかずっと、歩くのが大変そうなのですが、照明器具で、これちょっとラッパみたいな照明器具がチョンチョンチョンとついていて、とてもリズムを持って照らしたりとかですね。
これも築100年のアパートの1階なのですが、こういうふうに暗いところのその先に明るいものがあったり、教会も一緒だと思うのですが、このステンドグラスが正面にありまして、一瞬暗いところに入るのですが、この先のステンドグラスの1枚の扉のガラスと、その先に、木の柄が一緒だったりですね。開けたらまた同じようなディティールが出てきたり、そういうのにすごく感動しますよね。
こういうのがあると、例えば、路地の発想もそうなのですが、とても奥に何があるのだろうと引き込まれると思うのです。
楽しいアプローチ、帰ってきたくなるようなアプローチというのが、とてもイタリアではうまく、自然と作られているものだと思うのですが、日本だとどうしても道路から入ってすぐ玄関というふうになってしまいますが、少し工夫して、導線を曲げてあげたりすることも、1つ気持ちが豊かになることだと思うのですね。
最後8番目、インテリアが町になるですが、これは、私が1番好きな写真なのですが、サンジミニャーノで、おじさんがこういうアーチの中で新聞を読んでいるのですね。路地なので、道幅も2メートルもないのですが、よく見ると、境界線が出ないように椅子を置いて、新聞を読んでいるのです。こんなふうに多分このおじさんは、いつもこの場所で新聞を読んでいると思うのですが、町の中も自分の居場所があるというふうな、とても素敵だと思うのですよね。
で、ポルトフィーノ。こういう漁師町で、自分の家に色がある。それは単なるデザインではなくて、遠くから帰ってきた漁師さんが、自分の家はあの色だと頭の中でもわかるように色がついていて、そこから奥さんが手を振って、あなたお帰りなんていうところが、とても素敵だなと思うのですね。
こんなふうに伝統を守りながら、インテリアを自分らしくガラッと変えていくという暮らし方、それはたぶんずっと長年そう培われてきたことだと思いますし、そういう1つの命のリレーというふうに感じるのですね。私たち日本人は割と新築だからと、全部壊して建てなおしてということをしてきたのですが、やはりそこには先祖の姿なんかを感じるシチュエーションが少なくなってしまいましたよね。
でも、イタリアの場合、やはり、そこに何百年も同じ色の家に住んでいて、これも先祖、自分の家の色だというふうなことがあると、ずっとそれは子供に残して行けるような、そんなふうな命がリレーされるというのは、本当素敵なことだなと思いますね。
これは町の色をちょっとそういうことで見てみましょうと持ってきたのですが、北から南まで、本当に都市によって色が違いますよね。それは、生活している人々の性格まで、もしかしたら町が作っているのか、そういう生活だから町になるのか、どちらかわからないのですが、とても反映されてるなと思うのですね。
都市を見てみたいと思うのですが、ミラノの色ですね。霧が多くて、ナビリオなんかこんな感じで、私もナビリオの近くに住んでいたのですが、ミラノはどんな色かなというと、たぶんグレーとか、黒とか、ちょっと赤が出てくるような、そんな色。これは色分析してみたものですね、こういうところから。
ヴェネツィア、こんな感じですね。色が少し明るい。ちょっと赤、原色も多いのですよね。
フィレンツェ、フィレンツェは上から見ると、本当にもう屋根の色が特徴的だと思うのですが、こんな色合い。
ローマ、ガラッと太陽の色が変わりますよね。だんだん明るくなって。割と緑も多いんじゃないでしょうか。ピンクの壁に。
で、ナポリ。カラッと明るく。
こんなふうに、イタリアの面白いところは、都市の色が全く違うというところにあると思うのですね。北から南から。旅行に行っても本当にそうですよね。本当に違う風景を楽しむことができて、日本というのはわりと工業製品って、今家も、街並みも全部作られているから、北海道に行っても、沖縄に行っても、そんなに違いは感じなくなってしまったと思うのですが、こんなふうに都市の色として、1つ1つの家が街並みを作るのですが、インテリアはみ出して、こんなふうにハンギング、これはアッシジなのですが、どんどんどんどん外にかけたりして、気が付いたら、何と町になっていたということがありますよね。
こんな町の個性とか、これもとても大事なポイントで、アクセサリーってわれわれ呼んでいるのですが、人間と一緒だと思うのですよね。家がそのままボンと建ってたら、裸の女性が建っているみたいで、イタリア語で家はcasaと言いますよね。女性名詞。だから、家は本当に女性と同じだと思っているのですが、わりと日本の家というのは、裸の女性がボンと建っているみたいな感じじゃないですか。
でも、イタリアへ行くと、こんなふうにランプとか、表札とか、これはもうアクセサリー、イヤリングであったり、ネックレスであったり、ベルトだったりするのですが、こんなものが出てきて、こんなふうに外に向かって花を飾る。これはとてもきれいですよね。
最後に、最後の章なのですが、子供の感性みたいなところに触れたいと思うのですが、この方はパオロ・ナーバさんで、私が修行させてもらった建築家の方なのですね。これは若い時なので、今はもっとおじいさんなのですが、コンパスドーロという賞をとられまして、アントニオ・チッテリオさんと若い時にコンビを組んで、家具のデザイン、B&Bなんか、グランドメッカデザインされていて、今は独立されて、私この方と知り合ったのは、本当に日本の東京ビッグサイトの家具展、毎年やっているのですが、そこにたまたまセミナーでいらしたときに、イタリアに留学するのが決まっていたものですから、住所を教えてくださいと手帳を持っていきましたら、いいですよと書いてくださって、ミラノの住所だったので、本当に行ったのですね。留学して1週間くらいして。そうしたら、ミラノだと思ってたら、とんでもない田舎で、30分北に走って、リッソーネというところなのですが、もう想像とは別世界でしたね。建築事務所って、いわゆる日本のビルの中のワンフロアくらいのイメージだったのですが、もうとんでもない。この方のところに行きましたら、なんと、こんな風景で、ずっと塀なのですよ。それで、チャイムがありましてね、ここに。ここに入るのかどうしようかと思って、実は30分くらい入れなくて、なんかこの中がどうなっているんだろうと思って、でもアポイントとったから、入らなきゃと思いきって入ったのです。そうしたら、こんなふうになってたのです。
実は、18世紀のヴィラを買い取って、千坪もあるような敷地で、ご自宅兼スタジオをやってらっしゃったのですね。私の想像力ってなんとちっぽけなんだろうと思ったのですよ。イタリアって、底知れないなんかすごいものがあって、日本で想像することと実際とは、ものすごくギャップがありますよね。
で、ここで働かせてくださいとお願いして、いいよと本当におっしゃるものですから、もちろんお給料なしで修業させていただいたのですが、とても勉強になりました。このように彼は、ジャンフランコ・フェレとコラボレーションして椅子をデザインしたりとかしてたのですが、いいなと思ったのは、これはご自宅なのですが、親日家なのですね。これこいのぼりなのですが。こんなふうにだらーんと、こういうのが面白いのかなと思うのですが、オブジェとして下げてたのですが、お子さんの絵がオブジェになっているのですね。家の中に、全部。これなんかいいですよね。この古い18世紀のヴィラの中にモダンアートだと思ったら、当時5歳のぼくちゃんの絵だったのですね。こんなふうにして感性って磨かれて行くのかと思ったのですが、これもそうなのですね。これもそうなのですね。絵を風呂敷みたいな大きなのでつるして、その古い建物はそのままにしながら、そこにモダンなものをどんどんどんどん入れて行って、子供と一緒に楽しんでいる。とても広い庭で、本当何やっているのかよくわからなかったのです。こういうものがたくさんぶら下がっているのですね。で、デザインしてはほうっておいて、デザインしてはほうっておいてみたいなことを繰り返して。で、このように木が立っている中で、当時ドラフターみたいなので、私も修行させていただいたのですが、本当に仕事と日常生活が一緒になって、本当に人生を楽しみながらデザインしているというふうなことを目の当たりにしまして、こういうところから本当にいいデザインとか、感性って生まれてくるのだなと思ったのですね。
で、あまり締切締切ってなかったですね。私がいた1年ぐらいの間、キッチンの扉の握り1個完成してなかったので、そんなふうな長いスパンでデザインしていたのですね。
で、いつになったら家を作ってくれるのかと思って待ってたのですが、とうとう彼は家を作らずに、もちろんイタリアの建築家というのは建築家ですが、デザイナーであり、家を作るというよりも、椅子をデザインしたり、家具をデザインしたり、キッチンをデザインしたりという仕事が多いのですね。だから、私の認識が間違っていたのですが、そんな中でも、とてもデザインするプロセスだったり、マインドだったり、コンセプトをすごく大事にすることだったりとか、そういうのを教えていただきました。
最後、イタリアから元気をもらうということで、私は学んできたそのあたりのコミュニティだったりとか、インテリアだけ、外と分断されない町づくりですとか、そんなものを日本の中に取り入れて、広場と見立てて作ったりとか、路地を見立てて作ったりとか、こんな分譲地を作っているのですが、結果、お客様が本当にこの町を好きなってくださいまして、本当に思いもかけないような、ハンギング、この壁にたくさんかけたりとか、こういうふうに外に自己表現をしてくださったりとか、イタリア好きになってくださるのですね。私はとてもイタリアファンを作っております。
それで、こんなふうに素材もイタリアのポルフィドあたりまで買いに行ったりとか、ベニスの近くの加治屋さんに作ってもらいながら、その手作りのよさを、日本の分譲地住宅の、どうしても工業製品が多くなるところに、ポッと表札を入れたりとかですね、それだけでも、職人さんのぬくもりとか、これはイタリアのベニスの職人さんがお客様のことを思って作ってくださったのですよというストーリーとか、そういうのをとても喜んでくださるのですね。
そうやって、イタリアで生まれた建材の命が、海を渡って、今度は日本のお客様が10年20年と大事にそれを使ってくださるというのは、すごくいいなと思っております。
あるいは、これは今治タオルという香川県にあるタオルのメーカーなのですが、そことコラボレーションして、先ほど都市と色というお話をしましたが、女性を元気にするスカーフを都市の色で作ってみたり、例えばこういうふうに7色、7都市の色で作ってみたり、実際これ今インターネットで買えるのですが、日本のもじり織りという京都のとても伝統的な織機がありまして、それとイタリアを融合させたりとか。
これからですが、元気になる病院をデザインということで、もともと私はナースだったという原点に帰ってきまして、今高崎のほうのある病院様とお付き合いができまして、これからの人間ドッグというのをデザインしているのですが、広い人間ドッグなので、どうやってたいくつしないように歩いてもらおうかというところですね。
イタリアの路地とか、町歩きを持ってきまして、イタリアってなんとなく町の中だらだらだらだら歩いてしまいますよね。広場があったり、路地があったりとか。そんなふうな病院があったら面白いんじゃないかなということで、いろいろ。
これとても実は大きいのですね。200メートルくらいあるのですが。例えば、この通りに名前を付けまして、オリーブ通りとか、ミモザ通りとか、ここに行くとミモザ広場があるとか。こんなふうに病院を町歩きというコンセプトで今プランニングしているのですね。
で、ロビーがあり、宿泊施設には、世界を旅するというコンセプトで、当然ミラノというテイストも入れております。こんなふうにして、今年の6月にオープンするのですが、本当に何かイタリアというところからヒントをもらって、日本の皆様に喜んでいただいているなというのを実感しております。
65歳以上の方の占める割合ですが、今日本は世界1位ですよね。2位がイタリアなのですね。これってやはり今後両国の間で、これから高齢社会、もう入ってますけども、とてもヒントになるなと思ってまして、私はイタリアに行って、何に1番感動するかというと、年上の方の、50、60の方も、70、80の方も、町にどんどん出てて、ファッショナブルで、しゃんとしてきている。そういうのがすごくいいなと思うのですね。
そんなのを見まして、日本もこれからそうなっていってほしいと思いまして、マトゥーリというのは、イタリア語で、成熟した男女を指す言葉なのですが、50代からのライフスタイルを作るコミュニティ。家を作るだけじゃなくて、イタリアから元気をもらって、これはホームページで、イタリア研究会の橋都先生とか、篠さんとかのインタビューをさせていただいたのですが、またイタリアの方とかですね。どうやって楽しく暮らしていらっしゃるかなんてインタビューをさせていただきながら、コミュニティを作っているのですが、こんなふうに、ハードだけじゃなくて、ソフトも一緒に何か豊かな日本を作っていきたいなと思っとります。
そろそろ時間になりましたので、そういうことで、何かちょっと足りないところもあったかと思いますが、イタリアから元気をもらって、人生のプロローグ、生まれた時から最後まで、高齢者までですね。そんなことで、むしろこれからはイタリアに日本の文化を紹介していく時代なのかもしれないですね。そうやってお互いが交流しながら、新しく生まれてくる文化というのを形にしながら、私は豊かさを作っていきたいと思いますし、本当に看護婦の時にできなかったことを、空間を通してやっていきたいなと思っております。
本当にありがとうございました。先ほどご紹介いただきました「いい家に抱かれなさい」は、実は30代の女性の方に読んでほしいななんて思ったのですが、イタリアをヒントに、空間にしてきたお話とか、私がナースから今まで来る間にはいろいろな挫折もあったのですが、その時にイタリア人がかけてくれた言葉で、こんなに元気になったとか、そんなことが紹介されていたり、後、これからのインテリアというので、これもちょっと面白いのですが、女性のタイプを8タイプに分類して、例えばこれ、イタリア人は必要ないと思うのですね。なぜならば、自分のスタイルはこうよとわりとしっかりしてますので、ただ日本の私たちは、自分とブランド、自分は何を着てたらよりおしゃれなのか、どういう家に住んだらよりおしゃれなのかというのが、まだまだものがありすぎてわからない時代だと思うのですね。それを8タイプに、これはいろいろ性格診断とか載っているのですが、そこから分類した中で分けさせていただいて、じゃああなたはミラノが似合うよとか、あなたはローマが似合うよとか、都市まで結びついちゃったのですよ。そんなものが後ろの方に入ってたりします。
こんな年代別にいろいろな方を応援していきたいと思っておりますので、どうぞ皆様これからもご指導とか、ご協力もできたらいいなと思っておりますので、よろしくお願いします。本当に今日はありがとうございました。
司会 本当に戸倉さん、ありがとうございました。文字通り最初におっしゃっておられた人間は環境で生き方が変わるんだと、環境で人を幸せにしたいということをいう見事に実践をされておられるご様子がよくわかりました。たくさんの美しい写真とか、最新のDVDとか、数々の非常にわれわれにとって参考になるようなお話がありまして、大変興味深く拝聴いたしました。それで、これから、皆さんのご質問をお受けしたいと思います。
質問 私ヨモという名前です。毎年イタリアに1回くらい行っているものです。建築とかデザインには全く素人なのですが、興味持っておりますので、今日のお話、大変楽しく聞かせていただきました。それで、イタリア人の幸せになるインテリアということなのですが、1つだけ日本のほうが幸せだと私が思っていることがあるのですね。それは、お風呂なのです。日本のお風呂は、バスタブと洗い場と上がり湯とシャワーと4点セットなのですね。これは世界最高のものだと思います。私はイタリアへ行って、お風呂のバスタブの中でどうやって体を洗うのかいつも不思議に思うのですね。あれは日本人ほど清潔好きではないのかなと、ヨーロッパの人はみんな。それで、日本に洗い場があるという、上がり湯があるということは、もっとも合理的に、最高の清潔さを得られるのですよ。それをイタリア人とか、ヨーロッパ人、アメリカ人、知らないのかなと。知っててもやらないのかなと。それが非常に不思議なのですね。戸倉さんはイタリアと日本つないでいらっしゃるので、ぜひイタリア、ヨーロッパの人にこれを教えてあげていただけないかと。教わってもやらないかもしれないですけどね。日本人は西洋式のトイレをいち早く採用して、今は90%くらい普及しているのではないかと思いますが、利口な人だったらいいものを取り入れると思うのだけど、ヨーロッパ人どうなのでしょうかね。ちょっとそれを伺いたいと思います。
戸倉 ありがとうございました。おっしゃる通り、私も日本のお風呂は世界一だと思っております。イタリア人のメーカーの人をある時2人、社長と窓屋さんなのですが、リボルノの窓屋さんと社長とマーケティングのチーフの方2人呼んで、実は日本の最先端のM不動産のマンションのショールームに連れて行ったのですよ。こんなにすごいんだよと。お風呂がやはり、バスルーム、ユニットバスで、テレビがついてましてね。そうしたら、彼はびっくり仰天してました。日本は自分たちより100年進んでいると。じゃあそれをやるのというところなのですよね。ウォシュレットもそうなのですよ。私はビデが使えなくて、なんでこういうことするのかなと思って、日本にウォシュレット、いいものがあるから使わないのと向こうの人に言ったのですが、イタリア人は人の洗ったもので座るのが嫌だって、頑固として聞かなかったですね。で、絶対ビデははずせないよと。なぜならば、雑巾も洗うし、足温めるし、万能選手であると。ですから、そういうすごく文化に培われたものに対して、なかなか新しいものというのは難しいのかなと思うのですね。日本に来ているイタリア人は日本大好きですし、日本のお風呂大好きですし、多分帰ったら同じもの作ると思うのですけども、何でしょう、単に便利だから飛び込む、それを取り入れるという方たちではないのかなと思っております。むしろイタリアの文化をご存じの方にご意見をお伺いしたいくらい。
司会 僕は、それは湿度のせいではないかと思いますね、1つは。ヨーロッパ、湿度が非常に低いですから。気温も。緯度も高いし、汗のかきかたもすくないですからね。シャワーで済ませてしまうのが圧倒的に多いと思うのですね。
どなたかほかに。
質問 楽しいお話でしたが、やはり、経済的な問題というのも大きいと思いますが、環境を整えるというのは、病院もきれいにするにはお金がかかるし、やはり家も、先ほど見せていただいたのは、かなり名前のある方とか、お金持ちの方かなと。むしろ、イタリアは今全体的に貧しいという、アルバイトの人も増えているというような状況の中で、先祖の遺産がなくて、新たに作っていくとしたら、どういうふうになるのかなと、いくらかかるのかなというのを聞きたいですけど。
戸倉 そこまでいくらかかるのかの質問まで答えられなくてすみません。でも、おっしゃっていることはごもっともで、結構多くのイタリア人の方は、ご自宅で暮らしてたりとか、お母様から受け継いだ家を、いい生活をしてたりするというケースも多いと思うのですね。でも、私の友人の家でも、そんなにリッチな友人でなくても、ちょっと楽しむということは、お金をかけなくてもしていますね。本当に、例えば、布なんかも、そんな立派なメーカーのものではなくて、町で買ってきたりとか、またイタリアというのはそういうショップが身近にあるということも素晴らしいと思うのですね。町を歩いていると、そこにカーテン屋さんがふっとあったりとか、ちょっと外れてしまうかもしれませんが、こういうのを持ってきたのですが、これなんだかわかりますかね。カーテンのタッセル。こういうのを本当に日本では共布で作っちゃうのですね。カーテンのタッセルどめを。そうすると、カーテンって本当は文化というか、部屋の中でとても大事なウエイトを占めているのに、日本だとピシッとこう、何というのでしょう、隣から見えないためにしゅっとやって終わりだと思うのですが、でも、向こうのカーテンというのは、本当に自分も楽しむ、ファッションと同じような感覚もあると思うのですね。こういうのはそんなに高くないのですよね。これを自分用に、洋服1つ買いに行こうと思っていたけど、カーテン屋さんなんかおしゃれだわと。洋服買うのをやめてこっちを買おうとか、そんなふうな意識が、生活を楽しむ意識がとてもあるから、必ずしもお金をかけなくても、なんかちょっとしたことでしていることがとてもあるなと思います。
司会 僕1つ、先ほど戸倉さん、これからは日本もイタリアに紹介していきたいとおっしゃっておられましたけど、具体的にはどんなことを考えておられますか。
戸倉 これ多分いろいろな切り口があると思うのですが、私がミラノサローネとかに行って、残念なのは、日本的な要素は取り入れてもらっているのですけど、正しくないぞみたいなのがすごく多いのですね。なんかインドのオブジェと日本のものが一緒になってたりとか、多分彼らは日本風がいいのであって、伝統的な日本をちゃんと作ろうという感じではなくて、たぶんそれがおしゃれなのだと思うのです。でも、日本は元来、今本当に簡単な家とか、プレハブ多くなってしまったのですが、本当は木造住宅で、100年、200年持つ家をちゃんと作れて、そういう職人さんがいて、イタリアとものすごく似ていると思うのですね。戦後そういうものがどんどんなくなっていってしまったから、何か今残っているものは、ちょっとチープなものを目にすることが多かったりするのですが、私はやはり原点に立ち戻って、してみたいと思うのは、日本の伝統的な組子だったりとか、インテリアの材料、和紙もそうですし、やはり日本にあったもの、例えば、照明の取り方なんかも、イタリアの照明の当て方と、日本の茶室の横から障子を通してくる柔らかい光の当て方はやはり違いますよね。それを、私はイタリアをまねるということではなくて、何か日本のそういう精神性だったり、いいものをもう1回掘り起こしてみて、それをイタリアの方に伝えたりとか、その文化を、本当はこういうところすごいんだよというのを改めてご紹介したりとか、そういう掘り起こす作業、なくなっていってしまうような職人芸だったりとか、そういうのをぜひ取り入れて、でも、今日本人がすぐ、じゃあ昔の着物の生活に戻れるわけでもないし、全部畳で生活できるわけでもないので、その辺を今風にしたらどうしていったらいいかというのは、今後の課題であるし、私自身も取り組みたいところです。
司会 どうもありがとうございました。