3月例会(441回)
・日時:2017年3月15日 (水) 19:00-21:00
・場所:東京文化会館 4F大会議室
・講師:伊藤武 氏 (専修大学法学部教授)
・演題:現代イタリアにおけるポピュリズム:5つ星運動を中心に
イタリア研究会第441回例会が行われました。
講師は専修大学法学部教授の伊藤武さん、演題は「現代イタリアにおけるポピュリズム:5つ星運動を中心に」でした。現在世界中でポピュリズム政党が力を持つようになり、その動向が注目されていますが、中でもイタリアの5つ星運動(M5S)はその大きな得票率と独特な組織運営で注目されています。いったいM5Sとはどのような政党で他国のポピュリズム政党とはどこが異なるかを中心に講演は進行しました。
M5Sは2009年に結成され、地方選でそれなりの成果を出していましたが、誰もが驚いたのは、2013年の国政選挙で下院の得票率が第1位になったことでした。代表のB・グリッロは政治批判を得意としていた元喜劇役者で、国会議員ではなく党大会で選出された党首でもありません。実際の組織運営は2016年に亡くなったG・カザレッジョが行っていたと言われていますが、彼らはテレビと新聞というこれまでの政治活動の主たるメディアを敢えて避け、ネットと政治集会とを中心とした運営を行っています。また組織運営がオープンであるように見えながら、規律が厳格で除名者が多いのもひとつの特徴です。一方で反・既成政党、反・腐敗という立場は明確にしながらも、政策とくに経済政策は明らかではなく、政権を担当する力があるかは不明です。しかしながらこれまでの左右対立とは異なる立場に立っているため、伝統的に左翼が強い中部イタリアにも支持基盤があり、若者だけではなく高齢者の支持も集めています。こうした点から考えて M5Sがこれまでの政党が力を失った現代政治のフィールドに、それなりに合理的に適応していることは確かですが、果たして政権を担当能力があるのか、慎重に見守って行く必要がありそうです。
伊藤さん、ホットな話題について大変面白いお話をありがとうございました。なお伊藤さんのご著書「イタリア現代史」中公新書は、複雑な戦後イタリア政治史を理解するのに好適な良書です。(橋都)